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500系改造計画

鉄月間最後はこれで。

 来年にも営業運転に入るらしいN700系、最高速度300km/hに東海道新幹線の今まで255km/hに抑えざるを得なかったカーブでも270km/hのまま走れる車体傾斜システムを組み込み、定員・座席配置は300系・700系と共通って事で運用にも配慮した、今のところ究極の新幹線ってのが売りのようです。500系と700系のいいとこ取り、と言いたいのでしょうが、なんとなーく究極の妥協の産物という気がしなくもありません。とは言え、JR東海からしてみればこれで東海道新幹線から500系を追放する準備が出来たと考えていてもおかしくありません―というか考えているに相違ない―。さすがの我らが500系と言えども最高速度を270km/hに抑えられた上カーブでの性能はN700系の方が上となれば、次元の違う格好良さを持ってしても立場がないのもまた事実。5年もすると東京駅で500系を見ることはまずなくなるのではないかと思えます。まあ、当面は傷んできた300系を置き換える形で配備されていく筈ですので500系即追放とはならないでしょうが。

 ええ、でも東海道新幹線から追い出されるなら山陽新幹線を走ればいい訳です。でもそうなると16両編成はちと輸送力が大き過ぎ。って事で、短編成化の検討をしてみることにしました。鉄道に特に興味のない人は恐らく「ぢゃあ適当に抜いちゃえばいいじゃん」と仰るのでしょうが、事はそう簡単ではありません。日本、というかJRの電車は多くの場合「ユニット」という単位で複数の車両を一まとめにして設計されているため、これを無視してばらす訳にはいかない―無視しようと思うと実質的には再設計に近い作業になってしまう―という事情があります。例えていうなら、二人三脚する二人の片方は心臓と肺、もう片方は胃腸・肝臓だけ持っていてお互いが臓器を共用するようなものです。そういう構造にしておくと一人がそれぞれ一揃いずつ臓器を持つより軽量コンパクト化できるなどのメリットがあるのです。300系新幹線くらいからはモーター付きの車両(M車と言う)だけでなくモーター無しの車両(T車と言う)も一まとめにして重くなりがちな機器を分散させ、全体的に軽量化を図っています。500系の場合は全てM車ですが、4両で1ユニットを構成しています―だから16両で4ユニット―。短くするとすれば4両単位でやらなければ改造規模が大きくなりますし、仮に1~2両モーターを抜いてT車を入れようものならせっかくのパワーが生かせない事になってしまいます。いつぞやに「6両編成の500系とか想像したらワクワクしませんか?」という人を見かけた事がありますが、私は吐き気がしましたよ。500系の持ち味は外見もですけど実は同じ16両編成でも300系や700系の5割増に近いパワーがあるというところでして―もっと言うと16両編成単位でなら0系や100系も300系や700系と同じくらい、N700系は4割増程度にパワーアップされている―、それを殺してしまうような改造では意味がないのです。そんな訳で、ここでは8両編成化を考えてみます。名づけて500系「スーパーレールスター」化。

 では具体的にどうするか…なんですが、300系以降に採用されているアルミ製車体の新幹線は外形の改造にはとても不向きです。200系のように鋼をアルミに置き換えたような構造であればまだしも、鋼製の構造とは大幅に異なる関係で切った貼ったの改造は非常に難しい為、外側の改造は極力しないことにします。即ち先頭車とパンタグラフ付き車両は出来るだけそのまま使用。先頭車、パンタグラフ付き車両、グリーン車用車両には乗り心地向上の為セミアクティブサスペンションが付いているので出来るだけ使いたいところです。号車番号で言えば1、5、8、9、10、13、16号車ですが、5号車と13号車はパンタグラフ付き車で構造的に同じです。その上床下に入っている機器は博多側(1号車)方向からM-M1-Mp-M2と呼ばれる構成になっていて、4ユニットとも同じ順番で並んでいます。1、5、9、13号車の4両が「M」、10号車が「M1」、8、16号車が「M2」で、「Mp」車両にセミアクティブサスペンション付き車両がないんですね。「M」は4両あるのに…ということで仕方がありません、パンタグラフ付きの5、13号車の機器を「Mp」車の機器に積み替えましょう。どっちにしてもセミアクティブサスペンション付き車両は16両編成中7両しかない訳で、このまま足りない「M1」車は2、6、14号車のどれかから持ってくるしかないでしょう。元の16両編成の号車番号で表すと以下のようになります。

  1号車- 2号車- 5号車- 8号車- 9号車-10号車-13号車-16号車

 5号車と13号車は元「M」用の機器を積んだパンタグラフ付き車両で、これを「Mp」用の機器に積み替えれば最小限の改造で8両編成が出来上がる筈です。2号車だけセミアクティブサスペンションが付いていませんが、700系レールスターよりちょっとだけいい足回りを持つことになります。いやまあ、機器更新を兼ねて全車に高性能化したセミアクティブサスペンション装備!と大盤振る舞いしてもいいんだけどお金をかける計画だと妄想モードになっちゃいますので。700系レールスターの場合は2号車の新大阪側と7号車の博多側にパンタグラフが付いていますが、500系スーパーレールスターの場合は3号車(旧5号車)の博多側と7号車(旧13号車)の博多側に付くので若干位置が違いますが、先頭から2つ目の連結位置付近というのは変わりませんからこんなもんじゃないかと。

 走行に必要なハードウェア的には以上のような改造で何とかなりそうに思いますが、もう一つ車内の事も考えなければなりません。500系最大の弱点を挙げろと言われたら恐らく大半の人が「室内が狭い」ってのを挙げると思います。私は少しこじんまりとした感じの方が包まれ感があって好みなのですが、世の中そうじゃない人も多い訳で…。でも、解決策はあります。レールスターを名乗らせるくらいなので2+2列の座席配置、かつ座席そのものも700系レールスター程度には大きくしてやればいいのです。だだっ広いのが好みの人にはそれでも不満でしょうが、全車グリーン車に近いシートになれば現行500系のままでもそんなに不満は出ないでしょう。更に出入り口が一つしかない先頭車―乗り降りが滞りがち―ってのを挙げることも出来ますので、これも700系レーススターに準じた解決策を。そう、個室化して定員自体を減らしてしまうのです。いっそ運転席を通して前面展望を確保できれば申し分ありませんが…今の1号車で言えば1D、1E席ならなんとかなりそうな気もします。半分以上トンネルの山陽新幹線でどのくらい需要があるかはちょっと疑問ですけどね。

 残りはやはり700系レーススターに準じた構成にする訳ですが、ここで2号車を喫煙席にする事にしましょう。座席は3+2列配置のまま。その頃までに喫煙席というものをなくしてしまえた方がいいのですが、残っちゃうんなら2号車です。セミアクティブサスペンション無しの。全面禁煙にしてしまえればここは自由席って事になります。さすがに料金をより多く払っている人をここに回す訳にも行かないでしょうから。現行レーススターに準じるなら2~4号車の3両が自由席、1、8号車が個室中心の指定席、残りが通常の指定席、という感じでいけるでしょう。サイレンスカーは1、8号車の個室じゃない席、にすればそこそこ静かになりそうな気もします。

 もう少しいじれるなら、設計最高速度が320km/h―もちろんこれを常用できる―になっているのを300km/hに落として、加速性能を上げるようにセッティング変更したいところです。具体的にはモーターのギヤ比を少し下げる―現状2.79→3.00くらい―事になるでしょう。ちょうど東海所属の700系と同じくらいになります。…何故って?現行700系は勾配のきつい九州新幹線区間には乗り入れ不能と考えられているので、パワーに勝る500系の加速力を上げて対応できないかと目論んでいるからです。起動加速度だけで言えば実は700系の方が500系より上だったりしますので―こだま運用などを念頭に置いてそういうセッティングにしているのでしょう―。

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Distance Runner

表版もあります。

1月19日は、仕事だった。休みを取る予定だったのだが、前日になってどうしても仕事の都合が悪くなったからと、上司に休みをキャンセルしてくれと頼まれたのだ。気は進まなかったが仕方ない。彼女―妙子―は気を使っていたけれど、電話の向こうの声はやはり残念そうだった。正月休みに行けなかった分を埋め合わせる気だったのだが…。

 憂鬱だがそんな事を言っていてこれ以上仕事を遅らされてはたまらない。いつもだって決して手を抜いているつもりはないが、この日の僕は周囲をして「いつもの 3割は速く」仕事を片付けた。それでも残業無しとはいかず、明日の切符を買おうと大阪駅に着いたのは20時前の事だった。そう、僕は今大阪に住んでいるのだ。この会社に入ってすぐの頃に新人歓迎会で昔の転校人生が知れ渡ってしまったのが悪かったのか、親父もかくやというペースで転勤人生を送っているのだ。もう半年ほどで落ち着けるという事になってはいるが、まあこの会社の言う事だからあまり当てにはならない。おかげで妙子との婚約にこぎつけるのにえらく手間取ったし―身内に反対する者が誰もいないのに!―、相変わらず会うのは月 1回か 2回がやっとという有様だ。まあ、仕事中気の立っている僕を見て、上司が月曜に休みを取る事を許してくれたからいいとしようか。後は明日、青森に向かうだけじゃないか…と、みどりの窓口で時刻表をたどっていた僕に、誰かが後ろから声をかけてきた。

「よかったー、人違いだったらどうしようかと思っちゃった!」

 …は?何が起こってるんだ?ここは…大阪駅だよな。目の前にいる人物には確かに見覚えがあるし、声にも聞き覚えがある。でも、妙子が何でここにいるんだ?

「今朝になってね、なんだかどうしても今日会いたいって思ったら止まらなくなっちゃって、昼前に青森を出てきたの。」
「は、はぁ…。」

 間抜けな返事だと自分でも思ったが仕方ない。確かに時々勢い余ったような行動を取る事があるのは分かっているつもりだったけど、このタイミングで出るとは想像しなかった。
「それで…今晩の宿はどうするんだ?」
「え、私は…やだな、理性くらいあるでしょ、それに一応婚約者なんだし…」
顔を少し赤らめながら妙子が言う。
「いや、そういう問題じゃなくて。」
「やだ、私ったら何言ってるんだろ…って、さては部屋が片付いてないな?ちゃんと片付けなきゃだめだぞっ。」
「確かに片付いてるとは言いかねるけどね…そういう問題でもなくて、寮は部外者立ち入り禁止なんだ。事前に届を出しとけば入れない訳じゃないんだけど、男子寮なんて魔物の巣窟だから。」
「あ…ごめんなさい。ちっとも気が付かなくて…。」
消え入りそうな声で、妙子が謝る。
「いいって。贅沢言わなきゃ泊まるところはいくらでもあるしね。そうだ、明日はゆっくり出来るんだよね?」
「うん、特に予定はないけど…打ち合わせは日曜に延期してもらったから。」
「じゃあ、宿と明日の切符を取ってくるよ。僕は寮に戻らなきゃいけないけど、食事はいっしょでいいよね?」
「うん…。」
「よし決まり。一緒に泊まれないのは残念だけど、打ち合わせの件もあるし、プレゼントは部屋に置いてきてるんだ。 1日遅れで悪いけど、許してくれるかな?」
「そうだね、仕方ないよね…って、一緒に泊まってどうしようと思ったの?」
少し元気が出てきたみたいだ。やっぱりこうでなくっちゃ。
「そうそう、その調子。せっかくの誕生日なんだから楽しく過ごそう!」
「あ、からかってるな?もう…!」
その後、ちょっとしゃれたレストランで簡単にお祝いをした僕たちは、翌朝の再会を約束して別れた。

 翌朝。妙子の泊まっているホテルに迎えに行った僕は、少し早めの時間に行ったにも関わらず準備万端の妙子の様子を見てちょっと苦笑してしまった。妙子からは抗議の声があがったが、僕のお茶でも飲もうという提案で和解した。まあ、ともすれば世話焼き女房と言われる妙子の事、ろくに予定を教えていない今日は準備が早くて当然だったのだが。
「それで…何にも教えてくれなかったけど、今日はどうするの?」
「こっちで夏穂のところに寄っても良かったんだけどね…直接ゆっくり青森に帰った方がいいかって思って。」
「夏穂さんのところかぁ…せっかくだから挨拶していく方がいいんじゃないの?」
「いくらなんでもこの時間から店は開けてないよ。夏穂も相変わらず走るのと店を両立させるのに頑張ってるみたいだしね。」
「そっか…、大変なんだね、夏穂さんも。でも、直接ゆっくりってどういうこと?」
「乗り換え無しの電車で帰るって事。」
「乗り換え無しって…新幹線じゃないの?」
「特急があるんだ。13時間近くかかるけどね。」
「じゅ、13時間?着くのは夜じゃない。」
「夜って言うか… 23時前だから深夜だね。」
少し、間が空いた。
「青森に帰るの…嫌なの?」
ちょっと待て。どうしてそう来るんだ。
「嫌な訳ないよ。帰ったら打ち合わせやなんかでなかなか二人っきりになれないだろ。他の人も乗ってるけど、たまには身内の入ってこないところでゆっくりしたいって思ったんだよ。」
「あ、私ったら何考えてるんだろうね…ごめんなさい。」
「僕こそ、驚かそうと思って詳しい事言わなくてごめん。」
誤解は解けたか。マリッジ・ブルーって奴かな、こういうのも。もう少し気を使わなくっちゃな…。
「お、そろそろ駅に行かないと乗り遅れるぞ。」
「乗り遅れたら大変だよ。明日は午前中から打ち合わせなんだから。」
とりあえず、元気は出たみたいだ。

 13時間の旅という事で、お昼ご飯は用意しておく方がいいんじゃないかという事になった。最近は電車を待つホームでいろんなものが買えるので便利と言えば便利だ。指定席だから順番を待っていなくても座れるのだが、妙子は僕を列に残して食料調達に行ってきた。そうしているうちに僕たちの乗る電車、特急「白鳥」がホームにやってきた。懐かしい、というか僕たちには新鮮な印象のあるボンネット型の車両だ。「ほらほら、早く席に座らなくっちゃ!」「指定席なんだから席は逃げないよぉ」などと、いつもの調子で席に着いた。そして定刻の10時12分、「白鳥」は大阪駅を発車した。 5分も経たないうちに新大阪駅、30分もあれば京都駅に着く。ここまでは下手をすると最新型車両の新快速電車の方が速いくらいだが、京都から先は 1時間ほど止まらずに走る。琵琶湖の西側は区間のほとんどが高架だから琵琶湖が良く見える。新幹線からはほとんど見えないから、初めての妙子にとっては結構新鮮だったようだ。意外と雪に覆われている湖北から福井県に入ると、もう完全な雪国だった。もちろん妙子にとっては珍しくも何ともない光景ではあるけれど、大阪から 2時間で雪国に来れるのは意外だったようだ。
「金沢も結構な雪国だしね。まあ、青森ほど積もる事はあまりないけどね。」
「金沢にもいたんだったよね。美由紀さん元気にしてるかしら。」
「きっと成人式シーズンを乗り切ったところでほっとしてるんじゃないかな。でもすぐに卒業式シーズンか。」
「夏穂さんといい、美由紀さんといい、お店をしっかり継いでるんだからすごいよね。」
「酒屋の看板娘が何をおっしゃるやら。」
「そりゃまあ、そうなんだけど…二人みたいにまだ継いだって感じじゃないし。」
「もう数年どたばたすると思うけどさ…よろしくお願いしますよ。」
「はいはい。」
そんなことを話しながら車内販売で買った駅弁を食べ終わった頃には、金沢まで来ていた。このあたりはちょっと大きな駅には特急が止まるから、大阪あたりの新快速並みだ。そして金沢を過ぎると特急らしく停車間隔が長くなる。富山の平野を雪をまとって走る姿は外から見れば幻想的かもしれないが、車窓の眺めは雪煙ばかりになるから、さすがに二人とも退屈し始めた。昨日の仕事疲れか、まずは僕がうとうととし始め、新潟県に入った頃からはいきなりの旅で緊張していたのだろうが、入れ替わりに妙子が舟をこぐという感じになっていた。せっかく一緒にいるのに寝ちゃうなんてもったいないねと言う妙子に、一緒にいるだけでもいい気持ちじゃないかと、僕は正直に応えた。車内放送がもうすぐ新潟に着く事、そして進行方向が変わるから座席の向きを変えるように告げた。

 新潟を数分遅れで発車した「白鳥」は、いつもなら結構な数が乗ってくるらしい上越新幹線からの乗り換え客がほとんどいなかった。最近は大阪-青森間を結ぶ「白鳥」も、大阪や京都から乗る乗客の大半は北陸方面で降りてしまう。彼らにとって「白鳥」は、「雷鳥」一族の旧型車両に過ぎないのだ。京都では満員だった指定席車両も、今は 1人で 2席取ってもまだ余っている。そして新潟まではほぼ順調だったダイヤが、あっという間に 5分、10分と遅れ始めた。新発田駅に着いたとき、向かい側のホームに青森から来た「白鳥」が止まっているのが見えた。
「あれ、あっちはこっちより出発が 4時間早いはずなんだけどな。」
「きっと大雪の影響だよ。昨日も盛岡まで 10分以上遅れたし。」
「参ったなぁ。どのくらい遅れるんだろ。」
「天気予報では雪のピークはもう過ぎてるって言ってたよ。あんなには遅れないんじゃないかな。」
「それで新潟からほとんど誰も乗ってこなかったのかな。」
「秋田あたりで電話しておいた方がいいかもね。途中で止まっちゃったりはしないと思うけど…。」
やはりダイヤが滅多に乱れないところに住んでいると、つい天気を甘く見てしまう。妙子が駅で買っておいた弁当を昼に食べない事を主張したのも経験のなせる技、なんだろうか。外もすっかり暗くなって様子が分からないけど、車内放送によれば強風で徐行運転をしているとの事だった。酒田を過ぎる頃には遅れも 1時間以上になっていて、夕飯用に取っておいた弁当を食べる事になった。もう 8時なんだから普通でもお夕飯の時間じゃない、という訳だ。相変わらずの強風もあったし、複線の線路の片方が使えなくなって臨時に単線になっている区間もあったりして、遅れはどんどん大きくなっていく。北海道に渡る予定の人が乗り継ぎの列車を振り返るの振り替えないのという話をしていたり、東京行きの北斗星に乗り継ぐ人―鉄道マニアか?―がやはり同じような心配をしている声も聞こえてくる。車掌さんもその辺の対応で大忙しらしい。僕たちは青森に着けばそれでいいから気は楽だが、秋田に着く頃にはついに 1時間30分の遅れになっていて、妙子の家への連絡を終えた後はさすがに二人ともほとんどしゃべらなくなっていた。疲れてるんだから少し寝たらと提案した妙子に、疲れてはいるけど目が冴えてきていて眠れないと応えたら、私もなんだよという返事だった。

 青森県に入る頃になってようやく強風の影響がなくなったらしく、「白鳥」のペースが戻ってきた。聞き慣れた弘前という地名がアナウンスされた頃には日付が変わってしばらく経っていたけれど、妙子の元気はずいぶん回復していた。いや、僕の元気も、か。周囲の道路にも車はほとんど走ってないし、通過する駅に止まっている列車ももういない。「白鳥」だけが北へ向かって飛び続けているようだった。そしてもうすぐ 1時になるかという頃、駅の造りの都合があるから仕方ないとは言え、気を持たせるようにゆっくりとホームに滑り込んだ。定刻から 1時間50分遅れ、15時間弱の長旅になってしまった。着いた列車の後ろに向かっていこうとする僕を妙子が引き止めて、前に向かおうとした。
「え、出口はそっちじゃないだろ。」
「いいの、こっちで。」
「え、でも…。」
「この電車に乗った訳、他にもあるんじゃないかと思って。」
「や、やましい理由なんかないぞ。」
「やっぱりあるんだ。」
いたずらっぽく妙子が微笑む。そうなのだ。この「白鳥」は次のダイヤ改正を機会に廃止されるのだ。今のところ、昼間の在来線では1000km強を走る唯一の列車なのだ。高校の頃には特急なんて滅多に使えなかったし、大阪と青森なんて直接行き来する事もなかったから乗った事はなかった。大阪に勤務するようになってからは飛行機か新幹線を乗り継ぐのが普通になっていたから、やはり乗る機会はなかったのだ。たまたま妙子が大阪に来たのをきっかけにこのことを思い出して乗る事に決めたのだと説明すると、妙子は言った。
「あなたの事だから、何もないのなら夏穂さんや無理しても京都に寄って若菜さんに挨拶していくと思ったから…きっとこの電車に乗りたかったんだと思ったの。だから、もうじきお別れになるのなら挨拶しとこうよ。」
「挨拶…か。」
ゆっくり歩きながら先頭車両の前にきた頃には、やはり最後の記念に乗っていたらしい人達が記念写真を撮り終わっていたようだった。妙子は「白鳥」の目の高さに合わせるようにしゃがみこむと、小声で「ありがとう、白鳥さん」とつぶやいた。その様子は、いつも子供を相手にしている妙子らしさがいっぱいだった。「白鳥」は僕たちよりもかなり年上の筈だが、雪をこびりつかせたまま上気したように頬を染めて待っていた先頭車は、妙子にとっては子供のように見えたのかもしれない。しばらくそうしてから「そろそろ、いこうか」と声をかけようとした時、それは確かに聞こえたような気がした。
『着くのが遅れてしまって、ごめんなさいね。』
「気にすることないよ。事故もなく着けたし、楽しい旅だったよ。」
僕のつぶやきに、妙子もうなずいた。最後の日まで「白鳥」はちゃんと青森に帰ってくるよ、と妙子は言った。その日まで、あと40日ちょっと。

「そ…それにしてもしばれるなぁ。」
「この感じだとマイナス 5度くらいかな。一応青森育ちの癖に、だらしないぞっ!」
「大阪は最低気温がマイナスになる日だってほとんどないんだよぅ。それに慣れるとこれ、すごくきついんだよ…。」
「足元も怪しいし、明日はしっかり鍛えなおしてあげるからねっ!」
「その前に、お腹が空いた。」
「ちょっとしたものならすぐ作ってあげるから、うちに帰るまでがまんがまん。」
傍から聞いたら痴話ゲンカみたいな会話をしながら、僕たちは新町通りを歩いていった。こういうのも幸せって言うんだろうか…言うんだろうなぁ。

 自分で転載しておいてなんですが、まあ赤面必至な中身ですねこりゃ。鉄道ネタかつギャルゲネタという人間おしまい的な話でございます。いわゆる二次創作―その筋ではショートストーリー(SS)とかいう奴―ってのは楽に作れそうで実はそうでもないんですねこれが。いや、キャラクター設定(の一部)だけ借りて好き勝手なことさせるだけならそれなりに楽ですけど、キャラクターのイメージを尊重しつつ話を作るとなるとそれなりに。

 キャラクターは10年近く前に発売された「センチメンタルグラフティ」から安達妙子嬢(ただし年齢設定だけ20代中盤を想定したのでゲーム中の時間軸を基準にすると3~4歳分上)、シチュエーションは2001年3月に廃止されたJRの特急「白鳥」に主人公(プレイヤー)と一緒に乗るという状況です。作中の「白鳥」が遅れたのは私が乗ったときの様子を反映しているからです(表版参照)。現在八戸-函館間を走っている「(スーパー)白鳥」とはあまり関係ありません。

 念の為申し添えておきますが、書いたのは2001年3月(「白鳥」廃止直後)です。ゲームのキャラクターもある程度存在感が残っていた頃の話ですので…。

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サイレンスカーの盲点

意味ねぇじゃん。

 ええ、先日の出張の際に乗ってきたんです、ひかりレールスター。行きは東海の700系(のぞみ)でしたが帰りは少しひねろうという事で…。たまたま空いていたのが4号車に割り当てられているサイレンスカーだったので乗ってみた訳です。

 えーと、「サイレンスカーで談笑するなぁぁぁ!」

 私の座った席の近くに家族連れらしき4人組が座ったのはいいんですけどね、この家族大声じゃないけど談笑するんです。車内放送も始発駅出発直後と終着駅到着直前以外に入らない静かな環境だけに目立つんですよね、その声が。なまじ私はモーターの駆動音とかそういうのはあまり気にならない―むしろIGBTインバータの静かな音が気に入らないというかGTOインバータの独特の起動音が大好き―ので余計気になります。旅はみんなでわいわいしたい派と一人静かになりたい派に分かれるような気もしますが、私は2:8くらいで後者。もっと気に入らないのは検札―と言っても最近は自動改札を使う際に座席データを読み取って手元の端末にそのデータを反映させるので実際のきっぷを確認する必要がないそうですが―にやってきた車掌がいるときには黙っていること。静かにしているべき車両であることを認識していて、かつ自分たちが静かにしてないのも認識している訳ですよ。ああ、鬱陶しい。

 いやね、彼らの言い分はこうなんですよ。「4人一緒に座れる席がこの(サイレンスカー)車両にしか取れなかったんだから仕方ないじゃない」って。彼らがそう言っていたので間違いないです。でもそれが談笑して構わない理由になるなら禁煙車でタバコ吸ったって構わない事になりますわな。

 まあ、不幸中の幸いで行程の半分行かないところで降りていったのでその後は静かに…と言いたかったのですが、入れ違いに乗ってきた別の2人組がほぼ同じパターンで…。あれでも声を抑えてるつもりなんでしょうが、基本的に静かな環境だからかえって目立つんだよねぇ。

 もちろん、転んでもタダでは起きなくて済むようにいわゆる「オフィスシート」にあたる進行方向側の端の席を指定したので、PC用コンセントを使って「をー、新幹線でバッテリーを充電しながらPCが動くぞ」とかやってましたが。そこそこ長くwebページ作ったりblog作ったりしていると、人生をネタ化してしまいます。まあいいですけど。コンセント付きの席は東海の700系でも新しいものには付いているそうです(西日本の車両には多い)。競争率は高そうですが…。

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乗り鉄の性

だって乗り鉄だもの。

 出張先(会社)がJR沿線なものですから時間的に問題なければ新大阪までJRだけで行けるのですが、急いでいる時は御堂筋線を使う事もあります。帰りはタイトなスケジュールにしなかったのでJRを使った訳ですが、大阪駅で待っていた223系(新快速)に乗り込んだら向かいのホームに見慣れない列車が!さてあなたはどうする?

 私はもちろん乗り換えましたさ。321系乗った事なかったもん。
[JR西日本321系電車]

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変わりゆく風景

いつの間にやら。

 以前住んでいた沿線のJR加美駅からの撮影です。それっていったいいつの話だよ?と思っていた大阪外環状線の高架が完成に近づいているのが不思議に感じます。…いや、昨日の飲み会で一番若い新入社員が私の半分以下の年齢であったのがショックだったというかなんというか、時が経つのは遅いようで速いものです。

 百済貨物駅方面にも高架が出来ていたのは全く予想外で本当にびっくりしましたが。外環状線を高架にするんだから接続を止めてしまわない限り高架を作らなきゃいけないのは考えてみれば当然なんですが。

 しかし、九州から大阪に行くのにJR西日本しか利用しなくて済むってのも面白いというかなんというか…。切符の予約サービスをどこのにするか悩んでしまって進まない!
[JR加美駅より久宝寺方面を眺める]

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久々に乗り鉄

単に出張とも言う。

 C22編成からR68編成を撮ってみました(と書くと私が乗っているのが何かも分かる)。まあ一番無難というかスケジュールの都合でひねりようがなかったというか、30分遅く着いていいのならちょっとひねれたのですが…。

 手前にボケボケで写っているのは缶コーヒーです(見れば分かる?)。ロゴマークが300系ですな。

 本日の目的地は大阪です。出張で東京ならさすがに飛行機にするというか、新幹線で行ける時間に会社を出られない。福岡〜大阪だとトータルでは変わらないのですが、最悪立席でも予約なしで乗れるという理由で新幹線派です。前々からきっちりスケジュールを固めてしまえれば飛行機の方が安かったりしますが、伊丹は行くのが面倒。マイル貯めている人は飛行機派ですね、当然ですが…。
[0系R68編成を700系C22編成から撮影]

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お題指定バトン「鉄道」

伊賀 電様よりバトンが回ってきましたので回答してみました。

お題指定バトン「鉄道」です。

1.PCもしくは本棚に入っている「鉄道」。

 PCの中には昨夏の帰省計画書。本棚―そんなものは組み立てられてないけど―には時刻表。

2.今、妄想している「鉄道」。

 「ゾクゾクするような光景」あたりかな。10年あれば実現は可能だぞ。

3.最初に出会った「鉄道」。

 物心ついたときの自宅周辺を走っていた山陽本線、というのが妥当な答かも知れないが、小学校4年か5年のときに転校する前の地域まで一人(正確には妹を連れて二人)で乗った山陽本線、ってところだろう。(※路線自体はどちらも一緒の山陽本線である。)

4.特別な思い入れのある「鉄道」。

 500系新幹線とか485系時代の「白鳥」とかいろいろあるんだが、トミーのプラレールこそが私の鉄道趣味の原点、って事になろうか。

5.あなたにとって「鉄道」とは。

 交通手段。旅の相棒であり手段であり目的でもある。

6.バトンを回したい8人とその「お題」

 例によって頭どうかしてんじゃないのという人数に吐き気がするので、ご連絡(メールでもコメントでも)いただければお題を提供させていただきます。お題の方も希望を自己申告していただいて構いませんが、そのままで通るなんて甘い考えは保留しておきましょう。

 …nississippi氏、「おむすび」ってのはどうよ?

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マシな時代になってきた

まだぬるいけど。

 JR東日本が新幹線・在来線特急の禁煙化を決めたとか。既に乗車時間が最長2時間を切る長野新幹線は全面禁煙化されている訳ですが、個室主体の一部寝台列車を除いて全面禁煙化、と考えて良さそうです。

 まあ、当然だよね。

 所詮分煙など密室構造じゃ無理な相談なのでありまして、JTも「残念」とかくだらないコメントを出す暇があったら煙の行方を完璧に制御できるタバコの開発でもすればいいんです。乗客は禁煙車を選べても、乗務員は煙がもうもうと立ち込める喫煙車を避けて通る訳には行かないのです。先日元タクシー乗務員にタクシー組合だったかが健康被害の件で訴えられてましたが、乗客は神様とばかりに窓を開けての換気NGとか通達を出したツケを払わされる形になっている訳です。判決が出るのは当分先でしょうしどちらが勝つか私には分かりませんが、こうなると鉄道業界だって今のうちに方針転換しておかないとそのうち元車掌とか元車内販売員に訴えられまくるという事になりかねません。そう考えると、リスク管理としてはまあ妥当な線でしょう。

 喫煙者の方にはまあいろいろ反論もあるのでしょうが、喫煙者自らが喫煙車に立ち込める煙に辟易として禁煙席に座り、吸いたくなったら喫煙車のデッキに移動して吸ってくるなんて行動をするようでは…喫煙の効用をどう説明したところで説得力などある筈もありません。つまるところ、自分の出した煙以外は吸いたくないって自ら言っているようなものですから。この点については私も全く同意見なのでありまして、大いに賛同するところであります。ま、私は自分でタバコの煙を出しませんがね―少なくとも今までの人生で1本も吸ったことはない―。

 私は公共の場所は全面禁煙にしておくべきではないかと思っています。ひょっとすると過激な考えだという方もいらっしゃるかも知れませんが、私としてはこれはものすごく穏便な提案なんですよ。「喫煙所設置税」とか「吸煙フィルター税」とか愛煙家の人が聞いたら卒倒しそうなアイディア、片手の数くらいなら1分で出せますから。こんなのも用意してますよ?

 JR東海・西日本もN700系の喫煙スペースなんてしみったれた事は止めておいた方がいいんじゃないかと思いますよ。どうせ煙が漏れて分煙を維持できっこないのですから。

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実は鉄ねた

気づいてた人はどのくらいいるだろう。

「カラオケ処世術」
 実は歌った歌のタイトルを見ていただくと分かる人には分かる仕様になっています。この時送った上司(当時)はいわゆる「撮り鉄」な人だったので分かるかどうかと思ったのですが…みんなして酔っ払ってたので訳分からなかったと思います、多分。この他に同僚にリクエストされた―なんとなく、らしい―曲が「なごり雪」で、こちらは歌詞が鉄ねたでした。

「氷枝玉骨」
 このすぐ後でねたばらししてるけど思いっきり鉄ねた。シリーズ的に「漢字二文字で表すならば」四字熟語にチャレンジ」がある。

「原色の彼女」
 青森に出張に行った時に見かけた原色(非リニューアル)の485系電車の事。編成の長さは違うが日本海縦貫線を走っていた頃の特急「白鳥」を髣髴とさせる姿でした。(エンブレム=ヘッドマーク、ね。)

「疾走」
 見る人が見れば分かるが485系(リニューアル車)が吉岡海底駅を通過しているところ。携帯電話のカメラで撮ったにしては格好良く撮れてると思うけど。

 旅行記系などの明らかに鉄ねたは除いてあります。そう言えば、昨夏の帰省旅行記はまだ書いてなかったね…。昨年末の帰省旅行以上にねた仕込みまくりだったのだが。

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鉄戦隊

Jレンジャー。

グリーン:一応リーダー(体格はでかい)。オレンジとの仲があまり良くないのがちょっとした悩み(任務に差し障るほどらしい)。多彩な連携技が自慢で、中でも”ダブルマックス16連プレス”は超強力。変身コードは”延伸!”

オレンジ:自称リーダー。タカビー(死語)女と言われるが実際かなり高飛車。本当は抱えさせられている借金が多くて守銭奴化しているだけで、基本的に任務には忠実。手数の多さは群を抜いており、”コンビネーション7-2-1”は世界で彼女だけが会得しているとされる。変身コードは”増発!”

ブルー:リーダーと言いたい(が体質がついていかない)。最もスピード命のメンバーだが、最近それを生かせないのが悩み。ライバルが強力化している為苦戦が絶えないが、”500ストレート”と”RSフック”の2種類の必殺技は健在。変身コードは”加速!”

ライトグリーン:広い大地を駆け抜ける熱き漢。パワーとスピードが持ち味だが小技も結構得意。意外なようだが花が好き。6種類の”スーパー”ブローで広範囲をカバーできる。変身コードは”豪快!”

ライトブルー:メンバー中最も小柄。やや地味目の性格だが必殺技の研究にはかなり熱心で、女だてらにライトグリーンにも伝授する程の腕前を持つ。ブルーとの連携で放つ”ダブルウィンド”と単独で放つ”山河海岬”が主力技。変身コードは”快走!”

レッド:やたら口数の多い九州男児。口数だけでなく技の数もやたら多く、しかもそれぞれの技のレベルはかなり高い。必殺技”飛燕連斬”は途中から倍速になって相手に襲い掛かる。変身コードは”着彩!”

グレー:いわゆる7人目の戦士(6人目だろ普通)。あまり注目を浴びない地味な存在だが縁の下の力持ち的キャラクター。力には本人も自信を持っている。最近”SRCレボリューション”という必殺技を開発した。変身コードは”怪力!”

 …ねたはもちろんアレだ。

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