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宮沢賢治はプラネ向きか

「銀河鉄道の夜」を見てきて。

 先週の日曜の話になりますが(前エントリで時系列がどうこう言ってたのはこれの事)、宗像ユリックスで特別番組「銀河鉄道の夜」と季節番組(生解説番組)をはしごしてきました。同一館の2番組はしごはかなり久しぶりのような気がします。2番組で正味2時間弱620円なので、別にマニアじゃなくても無茶な話ではないと思います。東京都心部の1番組900円くらいのところでやってもロードショウ1本見るのと大差ないんですが。

 生解説は例によって?安定していい感じです。しかし何故か私が見る回はめがねのお姉さん(私より若いと思います)が続いているような気が…。見るのが大抵日曜の午後だからそういうシフトなのかもしれません。確か昨秋のペルセウス座物語(これもオール生解説)の時も同じ方でした。微妙にトチリが多いような気もしますが、欠点という程の事ではありません。でもあと2割くらい減らすとすごく印象がいいと思います。ちょうど小惑星イトカワがふたご座にいる事もあってか小惑星探査機はやぶさの話題を扱っていまして、88万人の名前(私のも含まれる)を載せたターゲットマーカーの事にも触れていたんだからSELENEのキャンペーンの話にも触れてほしかったかなぁと思っています。ロビー?の壁にポスターを貼っているんだから、話がとっちからるというマイナスは承知の上で…。

 問題?は特別番組「銀河鉄道の夜」。言わずと知れた宮沢賢治作のアレです。ユリックスオリジナルではなく、CGアーティストのKAGAYA氏を中心に企画制作がなされ、プラネタリウム番組制作プロダクション(そういう会社がいくつかあります)が配給するという形を取っています。結論から言ってしまうと、少なくとも私個人は「銀河鉄道の夜」がプラネタリウム番組向きとは言いかねます。宮沢賢治に心酔、というかむしろ浸水している人だとまた評価が違うと思いますが、私は基本的に宮沢賢治が嫌いです。「よだかの星」は何とか読みきったものの、「銀河鉄道の夜」は挫折した記憶があります。だからという訳ではないのですが、なんだか「スターウォーズ」のエピソード1~3あたりを髣髴とさせる印象があります。どこら辺に共通項があるんだと言われてしまいそうですが、なんだか脈絡のないシーンが順次組み合わさってるような流れに。はくちょう座が北十字と呼ばれているのは事実ですが南十字とともに妙に十字架にこだわった感のあるキリスト教的世界観に、さそり座のエピソードは仏教モード。いいとこ取りというよりはつまみ食いという印象を受けてしまいます。そこに星を三角塔(明治の頃の測量用に立てられた塔との事)を見立ててみるとか組み合わせたら、なんとなく味噌を放り込んだシチュー(しかも生煮えの野菜があちこちに入っている)でも食べているかのような印象を拭えません。で、そういう世界をビジュアルに表現しようとすると結果的にプラネタリウム投影機の星空が無くても別に困らないんです(事実、先日からDVDソフトとして発売されている)。この番組のためにユリックスでもCGプロジェクターを入れていたりはするのですが、賢治ワールドを前面に出すと星が見えないのはどうしようもありません。星を十分に見せる(=プラネタリウムを使う意義を見出す)為には映像はぎりぎりまで控えてBGV付き音声ドラマ仕立てにしなきゃだめなのかも知れません。「あまりに独特な世界観のため映像化は不可能とまで言われていた」というところはプラネタリウムの星との共存が前提なら賛成します。

 映像自体はいわゆる(私が言ってるだけ?)ラッセン調な色味を感じますが全体としてきれいです、確かに。番組で主な部分の朗読を担当していたのは桑島法子さんですが、劇中の3人(ジョバンニ、カムパネルラ、さそり座のあたりの乗客の女の子)を一人できっちり演じ分けられていてさすがという印象でした。以前まちだスターホールとか盛岡子ども科学館(プラネタリウムリニューアルオープンのときの番組)にも出演されていましたが、その筋で実力派と言われるだけはあります。後で調べてみたら岩手県出身って事で、その縁も買われた可能性はありますが。でも盛岡ではいかにも賢治万歳やりそうでありながら賢治にはほとんど触れずにオリジナル番組を作ってたのは、今考えるとものすごい英断ではないかと思います(だって地元だもん、普通は使いたくなるよねぇ)。番組中で「銀河鉄道は宇宙旅行をしている訳ではない」といったナレーションがあったように記憶していますが実際その通りで、してみると昨年某歌手と某まんが家とが盗作騒動でもめていた際に「銀河鉄道999だってパクリじゃないか!」という批判が某歌手のファンから出ていたのを読んだことがありますが、宇宙に鉄道を絡めた事以外の共通項はありません。999は完全に宇宙旅行ですから。番組自体の出来は間違いなくレベルが高いと思いますが、じゃあお前は人に勧めるかと言われると「プラネタリウムに見に行く気なら勧めない」です。いっそ映画館でやるんなら「お好きにどうぞ」なんですが。ただし、序盤少し騒ぐ子供もいたのですが中盤以降は非常に静かでしたから、星がどうのこうの言わずにエンターテインメントとして客観的に評価するなら5点満点で4点を切るような点は付けません。

 九州ではユリックスが最初だそうですが、各地で投影されている筈ですので興味のある方は見に行って損はしないでしょう。久留米の福岡県青少年科学館(レーザープロジェクター入れたところ)でもやるらしいです。レーザーでもやっぱり星は見えないでしょうけど…。

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コメント

宗像ユリックスプラネタリウムの加藤です。
今回もご覧いただきまして、ありがとうございました。

「銀河鉄道の夜」ですが、おっしゃる部分理解できます。
もっとも銀河鉄道の夜は、未完の作品ですし、世界感も独特、文章も難解、さらりとその世界感に行くことは非常に難しいと思います。KAGAYA氏もそこを非常に気にされており、「銀河鉄道の夜」を読んでいただくためのひとつのきっかけになれば、という思いで番組を作られたようです。

ただ、確かに星とのコラボレーションが弱い番組であることは確かですね。KAGAYAさんはアーティストですので、どうしても絵に主眼が置かれることは仕方のないことだと思います。
やり方によっては、もう少し星と絡めた演出もできるのですが、もっとも「星の中を走る」というシチュエーションですので、バックに星があるのもおかしな話ですよね?それを考えると星が少なくなって、ご指摘の通り、銀河鉄道はプラネ向きか?になりますね。

ただ、「星」が見たいという方のために、ご覧いただいた通り、この番組から番組を3つに編成を変えています。星をじっくり見ていただく季節番組。エンタテインメントなものを期待される方には、テーマ(スペシャル)番組、小さなお子様むけの「こども番組」といった具合です。お客様のニーズに合う番組をぜひチョイスしてくださいというメッセージもあります。

あと、もっと、もっと、星を見ていただきたい方には、ぜひ「メガスター」の星も見ていただきたいな・・・と思っております。4月27~30日の期間限定ですが、410万個の美しい星空を満喫していただけるといいなと思います。

プラネタリウムの星を大事に、これからもがんばってまいりますので、ぜひこれからもどうぞよろしくお願いいたします。

投稿: 加藤おさむ | 2007/03/01 01:25

コメントありがとうございます。

 「銀河鉄道の夜」対応の投影設備は言わばジェミニスター(九州だと佐賀に導入されていますが、私は10年ほど前に焼津で見たのが最初です)状態だと思われますが、これが前提なら通常の投影機の星空に1~2等星にCGの三角塔がフェードイン→ズームインして全面的にCGプロジェクターに切り替わる、といった演出も考えられるように思います。システム的に可能かどうかは判りませんが、1等星だけ消して星を遠景として使うという手も個人的にはあるかと考えています(※)。CGプロジェクターのみ使うなら何でもありですが。せっかく暗くした場所でやるのですから、表示されるものを抑える方の演出を混ぜてメリハリを付けると天の川が細かな星の集まりとして見えてくるシーンがより生きてくるのではないでしょうか(私の目の問題もあると思いますが、星の集まりのように見えませんでした)。

 今年からの3番組編成は事情を判っている人にとっては全く問題ないのですが、プラネタリウム=星が見えるというイメージで来られるライトな客層には期待外れにならないかなという心配があります。同じドームで全天周映画もやっている施設はともかく、プラネタリウム一本の施設で「思ったほど星が見えなかったねー」と思われてしまうのはどうなのかなと考えます。一般的な生解説20分オート番組30分くらいの組み合わせよりはボリュームがあって満足度は高いと思いますが。私のように続けて2本見てしまえば十分満足できますが、そこまでしない人の方が普通ですよねぇ、多分。

 幼児向け以外の昨夏以降の番組は一通り見せていただいていると思いますが、いろいろ考えていらっしゃるので私としても見に行き甲斐があります。メガスターは渋谷と川崎(いずれも臨時設置)でしか見てないので(ソニーのも見たか、そう言えば)、なんとか見に行ければと思っています。

※1等星は独立した機構になっているプラネタリウムが多い。

投稿: Mn | 2007/03/02 02:24

少し内部事情をお話しますと、実は一番最初は、星も含めて全部CGでやりたいというのが、KAGAYA氏からのリクエストでした。(今後公開されるところでは、そのほとんどは光学式プラネタリウムの有無に関係なく星もオールCGで行われます。)
さすがにわれわれとしてはそれには納得できない部分もあり、星については、光学式で実施したいということで、あのような形になっています。

また、あのような番組になると、館それぞれのオーダーは大変に難しいという大きな課題もあります。お考えのような演出については、諸問題があり、ほとんど無理かと思われます。
ある意味、ほとんど完成されているものが前提ということになるのです。そこがオリジナル制作でない不都合な部分でもあります。

それでも一部は映像をカットしてしまい、既存の機器を使った演出をしています。たぶん、他のプラネタリウムには入らないであろう演出がいくつか組み込まれました。

星とCGを完全にぴったりあわせて行うことは、一番最初に公開された、池袋のサンシャイン・スターライトドームで行われましたが、非常に大変な労力がかかり、配給で実施するには現実的な作業ではないそうです。(そのため、星も含めてCGでやりたいというのがKAGAYA氏のお考えのようです)

実は、今回の宗像で行われたCGと星についてですが、ほとんど偶然に星とCGが合ってしまったんです。また、宗像のプラネタリウムは非常に旧式で、かなりの制約があります。その中でかなり無理して演出している部分もあり、プラネタリウム通からも「なぜ、あのようなことがこの旧式でできるのか?」ととても不思議がっていました。

あと、1等星を消すという手法ですが、宗像のプラネタリウムでは、残念ながら旧式のためできません。(また新型においても1等星21個がすべて消せるわけではありません。)

>プラネタリウム=星が見えるというイメージで来られる
>ライトな客層には期待外れにならないかなという心配が
>あります。

実は私たちとしても一番心配した部分ではありますが、そのようなアンケートやお声は非常に少ないです。ほとんどないと言ってもいいのかな?という感じで、正直安堵しています。
(ちなみにアンケートの回収率も他の番組に比べても高い状況です。)
理由としては、ある程度の部分で星とコラボレーションしていることや、最後の4分間は「星めぐりの歌」をバックにヒーリング的な感じになっていることなどが考えられるかと思います。

広報的にはさほどかけているわけではないのですが、口コミで評判が広まっているようで、お客様も多い状況が続いています。また、これをきっかけに、宗像のみなさんに楽しんでいただける内容の番組を目指していきたいと思っております。

投稿: 加藤おさむ | 2007/03/03 00:08

遅くなりました。

 内部事情まで教えていただき、ありがとうございます。この辺は(業界内としては)大手制作の番組の配給を受けるという形であっても映画などとは違って施設毎にいろいろ変更が加わる(※)プラネタリウムならではの事情がどの程度影響するのかと思っていたのですが、やはり宗像独自のところがある訳ですね…。

 星の見えが少なめであることとマイナス評価のつながりですが、私が危惧していたよりは「何が何でもプラネタリウムは星だ」層が少ないということだと思います。下手な番組だとうるさくなりがちな子供の声がほぼ聞こえない状態だったのでおおよそ好意的な評価だろうとは思っていましたが、アンケート回収率も高いということで納得いたしました(個人的な感覚ですが、好評な場合はアンケート等の回答率が高くなり、不評な場合は他所で書かれる頻度が高くなるように感じます)。

 私の友人(プラネタリウムに関してはかなり硬派)だとどんな評価になるか聞いてみたいところですが、見に行く暇があるやら無いやら…。

※プラネタリウムの設備は本体が同じ機種だとしても施設毎に補助装置などの仕様が違うのが普通なので、ある施設向けに作られた番組をそのまま別の施設で使えることは稀。大手制作以外で他所の番組を移植した例はあまり聞いた事がなく、私が見た範囲では「星屑の記憶(名古屋パルコアストロドーム)」のリニューアル版のような形で作られた「宇宙の浜辺で…(相模原市立博物館)」とか、アメリカで作られた「Eyes of Hubble」を日本語化して葛飾区郷土と天文の博物館でやったとか(11年前に青春18きっぷで大阪から見に行った)のを憶えている程度。
http://homepage3.nifty.com/tjb/sgcj/sagan2.html

投稿: Mn | 2007/03/05 00:11

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