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念押ししておくがサマータイム絶対反対

…つまらんメンツで事実を曲げるな。

 計画停電回避のためと称して、O前研一とやらがサマータイム(2時間進め)を提案しています。サマータイムの省エネルギー効果はとっくの昔に否定されている筈なんですが、性懲りもなく持ち出してくるものです。25年ほど前からずっと言い続けているそうですから、引っ込みがつかなくて言い続けているだけのような気もしますが。

 O前氏は時間を2時間前倒しして「太陽に仕事をさせる」事によって節電が可能と主張されていますから、夏場に太陽に仕事をさせるという表現からも分かる通り照明用の電力を節約できるという意図と考えて良いでしょう。総消費電力量に対し照明用の電力が大きな割合を占めるのであれば消費電力量の季節変動は夜の長い冬がピークで夏には減少する筈ですが、実態は夏に大ピーク、冬に少し低いピークが来る事から、冷暖房が大きな割合を占めている事は今更私が指摘する必要もない周知の事実でしょう。従って、まず手を付ける必要があるのは冷暖房用の電力を削減する事の筈です。ひょっとしたら朝の涼しいうちに仕事をすれば冷房使用を削減できるという主張かも知れませんが、だとすれば「太陽が仕事する前に」と言わないと辻褄が合いませんし、今まで私が勤務した和歌山・大阪・東京・仙台・福岡・名古屋のどのオフィスでも盛夏には朝から冷房を使わないととてもやってられなかった訳で…(屋外勤務の人には怒られそうだが、屋外勤務だと10時と15時に30分ずつ休憩が入って実質2時間動くと休みが入るような体制で動くのが普通だったりするのよね…そうでもしないと気温40℃とかの環境では死にかねないけど)。

 東京電力管内だと例年のピーク時の消費電力量に対し現在供給を見込める電力は1/3くらい足りない筈で、だとすれば「小さな事からコツコツと」と悠長な事を言っている余裕はない筈です。しかし、停電はその間だけの機能停止だけならまだしも前後数時間以上分にわたってダメージが残る場合も多々あるので避けたいのは間違いありません。となれば、冷暖房の稼働率を下げる施策がベターという事になります。この目的にはサマータイムを含めたピークシフト策は無力です(…とまで言わなくても期待できない策なのは間違いない)。気温のピークはどうやっても1日1回やって来る訳ですから、冷房があるのはホテルくらいという時代ならともかく、時計の針をどっちにどう動かしても需要場所が変わるだけでピークの抑制そのものには効果がないのは明白です。その意味ではピーク分散も同じですが。

 ピーク抑制策としては電気料金をいじるのが妥当でしょう。実施までに長く見て3ヶ月しかありませんから、事実上ソフト的に何とかするしかないからです。幸か不幸か昨夏は記録的な猛暑でしたから、それを基準に抑制策を練れば比較的公平な負担で実施できるでしょう。昨夏の70%が今夏の供給限界と仮定して、各戸毎に50%未満に抑え込めば割引、50~60%は通常料金、60%を超えると1%毎に10%割増(70%に抑えて昨年の倍)というのはどうでしょうか。昨夏並みに使おうものなら実に4倍の料金を請求される訳ですから、打てる手は徹底的に打たれる事請け合いです。事業用だとこの割増率はいかにもやり過ぎ感があるので、消費電力に対して冷暖房が占める率で割増率を加減すれば適正値にコントロールできるでしょう。

 もちろん、可能であれば電力量と時間帯とで細かく分けて課金する(ピーク時間帯は高く、余裕がある時間帯は安く、一度にたくさん使うと高く、平準化されていると安く)のがベターですが、全部をそれに対応する電力量計に入れ替えるには数年はかかるでしょう…。平準化するだけなら低負荷な深夜にバッテリー蓄電→高負荷時に蓄電していた電力を放電するという手もありますが、エネルギー効率的に見るとあまり賢い方法ではない(現実的なバッテリーだと放電時に取り出せるのは充電した電力の数割)ですし、やはり設備を整えるのに数年では済まないでしょう。ひとまずここ1~2年を乗り切るためには、電気料金でピーク抑制のインセンティブを引き出すしかなさそうです。ピーク平準化策の冷暖房エネルギー削減に対する効果は疑問ですが、それでも冷暖房以外の需要を平準化しなければとても許容量には収まらないでしょう。なのでこの施策が必要なのは理解できますが…ただ、ピークを低くする代わりに全体のエネルギー消費量は増加してしまうと予想します。


 それにしてもO前氏のオフィスは昼間自然光で仕事できる環境になっているのでしょうか。今まで私が勤務した和歌山・大阪・東京・仙台・福岡・名古屋のどのオフィスでも勿論の事、通った全ての学校も南か東向きの窓があったけど授業中は電灯を使っていましたがねぇ…。自然光を使おうと思ったら天井の高さを通常の3倍くらい取って北向きのトップライト(鋸型の屋根になっているいかにも「工場」って感じの建物が典型例)にしないと、明暗差が大きすぎて多大な弊害が出るのですが(芸術家のアトリエもそういう設計が多い)。

 確実に予想できるのは、サマータイムを導入すればみずほ銀行が潰れる(形はともかく今のみずほ銀行ではなくなる)事くらいでしょう。義援金が集まっただけでああなる銀行がサマータイムに対応しきれる訳ないじゃないか。

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”ごっこ”じゃ困る

…自覚がないらしいのが痛い。

 先日から話題にしているアマチュア無線による非常通信について、ネットで表明されている意見を集約すると大体3パターンに分けられそうです。一つは一般的な「非常時には有用ですね」パターンで、私も触れた実際に聞いていたら「これはひどい」パターンがもう一つ。最後は少数ですが実際に運用した人の「ひどいとはなんだ」パターン。

 敢えてほじくり返すのもどうかという気はしますが、仮にも非常通信しているところに妨害をかけるような輩は論外としても非常通信なら何やってもいいと勘違いしている腐った”爺”とか運用技術が未熟過ぎて足を引っ張っているだけのヘボオペとか…なかなかひどいものがありました。30分聞いていて有益な交信が5分もあったかどうか。私の書いたものを読んでかどうかは分かりませんが(私のではなさそうですが)「ひどいとはなんだ」系の反論に少々反駁しておきましょう。敢えて血祭りに上げるような事はしませんが

「非常時に杓子定規な対応をすべきではない」
 …本当に非常時なら賛同しますが、私が聞いていた頃には公共通信で連絡が取れるところ同士の交信ばかりでしたからどう贔屓目に見ても電波法上の非常通信には該当しない訳で。雑談するなとは言いませんから非常通信用の周波数以外でやってください。でなければ、本当の非常通信が埋もれて聞こえなくなります。

「安否確認は立派な非常通信だ」
 現地で実際に捜索する人たちにとっては。大目に見ても公共通信が復旧していない被災地で得られた確認結果を転送するところまでで、被災地以外からの問い合わせは害悪でしかありません。そこにあるのはやっている当人たちの自己満足だけです。

「非常通信は立派なボランティアであるから多少の不手際があって何が悪い」
 非常時でなければ。非常時に必要なのはエキスパートだけです。というか、エキスパート以外は邪魔。そもそもワッチがまともにできない人はアマチュア無線家として失格。

 どうも、非常通信ごっこ(でなければ”のようなもの”か非常”時”通信)している連中は「非常時だから(好き勝手に)”電波を出す権利”がある」と勘違いしているのでしょうが、非常時に居合わせたら”協力する用意”があると認識すべきでしょう。非常時に監督官庁の許可など待っていたら助かるものも助からないから非常通信は個々の判断で行える事になっている(電波法第52条)訳ですが、あくまでも「自然災害や暴動等が発生した(または発生する恐れがある)時」、「他の通信手段が使えない(または著しく困難)場合」、「人命救助、災害救援、交通通信の確保、秩序の維持のため」の3条件を全て満たす場合にのみ認められているので、私が聞いていた交信のほぼ全ては被災地外からの状況問い合わせでしたから非常通信には該当しない事になります。…該当したら総務大臣への報告義務があるので、”ごっこ”している連中にとっては該当しない通信でないと逆にまずいのでしょうが。法的に”のようなもの”は目的外通信になる可能性が高そうですが、万一被災地側で役に立つ内容なら非常通信周波数でないところでするのが落としどころでしょう。被災地外からの状況問い合わせなど現地では役に立たないどころか妨害行為でしかないのですが。

 最近では2008年6月の岩手・宮城内陸地震、もう少し遡ると1995年1月の兵庫県南部沖地震のように一応の成功例もない訳ではないので、その時の成功体験を基にアマチュア無線による非常通信をもっとアピールするべきだという論調も「非常時には有用ですね」パターンの拡張として見かけます。しかし岩手・宮城内陸地震の成功例は、道路の崩落現場に遭遇したものの辛うじて無事だったアマチュア無線家が救助要請するのに車に搭載していた無線機を使ったというシチュエーションです。この現場が携帯電話の通話圏外だったので先の3条件を全て満たしていた事になります。問題は兵庫県南部沖地震の時で、現在は事情が少し、というよりはかなり変わっている点に留意する必要があります。この時は携帯電話も利用者が今ほどいなくて固定電話よりつながりやすかったので非常時には携帯電話が役立つという常識が生まれたのですが、数年で利用者が大幅に増えたのであっさり覆った事を憶えている方もいらっしゃると思います(その割に今回も通話を集中させて自分の首を絞めに行っているんですが)。1995年当時は無線の世界も比較的安価ですぐに買えるようなものはアマチュア機しかなかったのと、特定小電力機が送信出力1/100(通話距離で理論上1/10)以下なのに価格がアマチュア機より高かったという事情もあってアマチュア無線が重宝されたのですが、10年前には既に出力(≒通話距離)は法規制の関係で変わらないものの価格はアマチュア機より大幅に安くなり(一流メーカー製レジャー向けの安価なタイプで一式揃えて2万円くらいから、業務向けのヘビーデューティタイプがアマチュア機並み)資格や申請など一切不要で買ってすぐ使えるので、避難所などでのスタッフ連絡用なら充分です。そして最近はデジタル簡易業務無線(登録局)という、アマチュアの高級ハンディ機より少し高いくらいの価格で通話距離もアマチュア機並みに出来るジャンルも普及し始めたので、ある程度の通話距離が必要な用途にはこちらを充てるのが筋でしょう。登録局は従来の「免許」よりは緩い「登録」の届出をすると登録状が交付されて使えるようになるというシステムで、使う人には資格は不要でレンタルも認められています(貸す側が事後に届出をする必要はある)。…今更アマチュア無線で素人が”ごっこ”しなくても通信手段は確保できるのです。

 地域情報などは非常時には素早く免許されるようになったコミュニティFM放送の方がはるかに適していますし(どこにでもあるFMラジオで聞けるので当然ではある)、一般の通信を確保する目的なら衛星電話やインターネット衛星(「きく8号」とか「きずな」)を使用するシステムを充実させる方が効率的です。強いて言えばアマチュア無線が最も得意とする「簡単な設備で遠距離通信が行える」メリットをヘボオペで使い物にならなくした揚句、被災地外からの状況問い合わせなど現地では役に立たないどころか妨害でしかない行為を延々としているようでは、”ごっこ”をやっている連中の「アマチュア無線が役に立つ事をアピールしよう」という気持ちとは裏腹に足手まといであるという認識を植え付ける可能性すらあり得ます。というか、「電波法第74条に基づく依頼じゃないけど無線機を提供してくれませんか」という要請が監督官庁から出ていたのですが、要するに「無線”家”は要らないので無線”機”だけ寄こせ」と言われているようなもので、とっくの昔に見放されているのかも知れません。…機種もバンドも統一せずに無線機を集めてまともに使えると思われているとすれば、それはそれで問題ですが。

 宮城県庁にボランティアとして入ったはいいが県庁の担当者と揉めて撤退したというやり取りも、同情的な声もあるようですが私は違和感を感じます。ログ(交信記録)を残すのはいいとして、どうしてQSLカード(交信証)の交換なんかしようとしたんだか…。恐らく県庁の担当者としては自分の指揮下で言われた事だけ通信する通信士が設備持ち込みでやってきたと思ったら勝手な事をしているので追い出したというところでしょうし、アマチュア無線家としては公認の局として動きたかったがあくまでもボランティアであるという点を理解してもらえなかったというところのようですが、まあ同床異夢って奴でしょうね。やり取りを見る限りでは県庁の担当者は無線に詳しい訳ではなさそうなので、まだ追い出されただけで済んだのかも知れません。もし詳しかったら、県庁を騙るも同然の状態で非常通信の要件を満たさない通信を勝手にやって、勝手にログを残して、勝手にQSLカードを発行しようとしたという事ですから、物証を残しながら違法行為をしているようにしか見えなかった事でしょう。電波法第52条の要件を満たしていればログを残さないと後で報告の時に困りますから言い訳できますが(古くから無線やっている人は逆に気付いていない場合があるが今はログが法定書類から外されているので「ログを付けるのが義務付けられている」とか言ったら逆に突っ込まれるかも知れない)、QSLカードに至っては単に交信の記念に発行するものでしかないので、「この非常時に何やってんだ」と殴られても仕方ないくらいの行為に見えます。交換して当然と見える方は、多分”ごっこ”しているのでしょう。まともな神経をしている人なら、どこかのファシス都知事とかプロ球団上層部の発言くらいに感じるのではないでしょうか。

 被災地外からTVなどの音声をアマチュア無線で再送信なんてのはどうやっても非常通信の要件を満たしえませんし、そもそも合法だとしても無益かつ有害な行為でしかありません。JARLの非常通信ガイドラインでも「するな」と明記されている訳ですが(どう考えても合法ではないしする意味もないので当たり前)、「禁止したらアマチュア無線のメリットが生かせないではないか」と逆切れしている意見まである始末。しつこいようですがアマチュア無線に認められている非常通信は被災地から発信される通信とそれに応答するものだけなのであって、非常通信と称する”ごっこ”は邪魔になりこそすれ役には立ちません。…自己満足のために被災地に向かって安否確認する連中には役立つのか。残念ながら一握り、いや一つまみの有益な交信を除けば、非常通信にかこつけて電波が出したいだけの連中と電波を出せばボランティアになると信じている頭が幸せな連中のやっている事は、被災者にとってもアマチュア無線にとっても害悪と不幸でしかないのです。アマチュア無線のためと信じてやっている方には悪いのですが、ボランティアごっこは全く逆効果なのが現実である事を認めなければなりません。

 せめて本当に必要な時以外はワッチに徹し、電波を出すなら少なくともプロの足を引っ張らない技量は身につけて欲しいものですが。

 参考までに兵庫県南部沖地震で自らも被災者となった西宮市議の方が書いたものにリンクを張っておきます。これを読んでいただければ、私が過剰なまでに(全く過剰と思ってないどころか全く不足だとしか思ってないですが)非常通信”ごっこ”を非難する理由が理解していただけると考えます。

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続^4アマチュア無線活性化策

D-STARが使えるかも知れん。

 「釈然とせぬD-STAR」で疑問を呈しているのでD-STAR否定派と思われているかもしれませんが、どちらかと言えば私は推進派だと思っています。なんで普及を阻害するような奇怪な仕様なのか突っ込んでるだけで。

 アマチュア無線でコミュニケーション志向を強調するのは得策ではないというのが私の主張である事を変える気はないのですが、それでも「海外とも話せますよ」という方向でアマチュア無線をアピールするのであれば、レピータまで電波が届きさえすればハンディ機1台でそれを実現できるD-STARシステムの推進は必須ではないかと考えています。「EcholinkやWiresだっていいじゃないか」と仰る向きもあるでしょうが、電波法的にグレーゾーンが残るのは好ましくないと考えているのと、個人的に”ルーム”などの気持ち悪い概念が嫌いなのとそれをアナログ電波でやる意義が感じられないからです(従来の無線機がそのまま使える=技術的チャレンジがほぼ無いって事で)。短波帯の巨大なアンテナを立てるのに何の問題もない場所にお住まいの方には分からないでしょうが、都市部では電波を出せるようになるまでの障害があまりに大きいのです。…そこを何とかする事に興味のある人間にはやりがいのあるテーマですが。途中をネット経由してでも無線に触れてもらえるなら、その点に関してはD-STARは決して悪くないシステムだと思っています。仕様が奇怪なだけで。

 しつこく「仕様が奇怪」と書いていますが、奇怪なのは主にレピータに中継させる際の設定においてユーザーが端末にゲートウェイのコールサインを設定しなきゃいけないのかという一点です。ゲートウェイはレピータ自身が一番良く知っている訳で、それをユーザーにわざわざ設定させる必要があるかというと非常に疑問です。D-STARを簡易携帯電話もどきと捉える向きの意見に耳を傾けようという気はないのですが、そもそも設定する事自体の必要性が感じられない項目が必須になっているという点は強く非難されても仕方ないと考えます。

 しかし、総務省が旗を振ってJARL(と機器メーカー)が策定した規格ですから日本で想定通りの使い方をする限りは大手を振って使えるというのは、前回触れたような災害時の非常通信回線としての期待を背負わせる際には必須条件です。グレーゾーンのあるシステムを公共施設に置く事はアマチュア無線家には良くてもその場の責任者には重大な問題となるからです。私の知る限り名古屋(昭和区)と高松と熊本のD-STARレピータは赤十字病院に置かれていますが、これも災害時の非常通信を担う事を想定して組織されている赤十字のハムクラブがあってこそ。役場などに同様の目的でアマチュア無線局を設置するなら、やはりグレーなシステムは避けねばなりません。

 さて、D-STARは基地局が使えなくなったら全体がダメになる携帯電話と一緒ではないかと仰られる向きもあるでしょうが(法的にグレーでもEcholinkとかの方が勝手に設置できて災害に強いのではないかという指摘もあるでしょうが広域的な災害ではバックアップ設備を十分にしにくい点と統制が取れるかどうかに期待しにくい分相殺されると考えます)、D-STARはレピータなしの直接交信も当然でき、同様に直接通話モードもあったPHSよりも大きな送信出力を扱える点で優位な部分があります。で、このメリットを最大限に生かす方法を一つ思い出しました。

「D-STARレピータを28MHz帯に」

 28MHz帯は短波帯で唯一FM(F3E)が許可されているバンドなのでD-STAR音声(F7W)も問題なく許可されますし、既にアナログFMモードのレピータも存在します(現時点で実際に対応できる製品はIC-9100シリーズのみですが、これは技術的な問題ではありません)。また、DーSTARレピータは仕様からしてネットワークに対応しているので、28MHz帯レピータ最大の難関である送受信アンテナの共用回路(デュープレクサ)または干渉しない距離への設置を考えなくても構築可能です(ただしその場合アナログレピータと同じ、いわゆる山かけ中継動作は出来ない)。28MHz帯は一応短波帯なので、今回被災した三陸地方のように入り組んだ地形であっても比較的少ないレピータで交信可能なエリアの確保が容易です。もちろんアンテナのサイズでは430MHz帯や1200MHz帯よりも不利になりますが、それでも今回非常”時”通信が行われた7MHz帯や3.5MHz帯よりは圧倒的にコンパクトに出来ます。

 28MHz帯FMレピータは現在日本国内では六甲山山頂付近に1ヶ所だけ設置されていますが、短波帯かつ送受信周波数が100kHzしか離せない故に巨大なデュープレクサが必要になるか(430MHz帯用や1200MHz帯用ならVHSビデオデッキ2台分くらいのサイズになるものが自動車サイズとか戸建サイズになってしまう)送信所と受信所をkm単位で離すかが必要になります。その難しさ故一番多かった時期で国内に3ヵ所(六甲山の他知床と鳥島)しか設置できなかった訳ですが、D-STARレピータであれば山掛け(1ヶ所で送受信する)中継することさえあきらめればあとは無線機と制御機器とアンテナだけ設置できれば実現できます。通常のアマチュア無線であれば被災地域側にもそれなりの設備を必要としますが、レピータをうまく使うことで柔軟性を大幅に向上できると考えます。

 D-STARはDV(音声)モードでも1kbps以下とは言え同時にデジタルデータ(スローデータ)を流す機能が組み込まれていますから、端末ソフトを工夫すればちょっとしたテキストデータを流すには十分です。エラー検出・訂正機能が無い点を問題視する向きもありますが、物理層やデータリンク層でやらなきゃいけない話でもないし(NMEA0183フォーマットのようにデータにチェックサムを付けて流してアプリケーション層で検出処理すればいい訳で)、どうせPCなりなんなりの端末を繋いで通信するなら余裕のある層で処理すれば良いだけの話です。恐らくは無線機でエラー検出して再送が必要になった場合に無線機が勝手に送信する仕様にどこかから難色が示された、というところなのではないかと勝手に推測していますが、無線機同士の間は物理層とデータリンク層だけだと思えば腹も立たないというかその様に通信システムを構築すれば良いだけで。欲を言うなら、音声のない時には全帯域をスローデータに割り当てる機能があればより使いでがあったのでしょうが。DDモードは1200MHz(以上)でしか使えないので速度的には圧倒的に優位なのですが、活用しようと思うと全国に1800ヵ所(個人的試算)とかレピータが必要になっちゃって現実的ではないですよねぇ…

 28MHz帯、430MHz帯、1200MHz帯のDV/DD/FMモードフル対応、バッテリー駆動対応(5W出れば十分)のコンパクト機に(マニアでなくても)持ち歩けるサイズのアンテナをセットにして売ればどうでしょう。GPSも標準装備かな、もちろん。

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続^3アマチュア無線活性化策

…下手にしない方がいいのかも?

 こんな災害が起こった直後のせいか「ケータイって頼りにならねー、アマチュア無線でもやろうかな」といった感想をblogに上げている人も見かけます。アマチュア無線家側も「こんな時こそアマチュア無線」と頑張っちゃっていたりするのですが、ちょっと待て

 理論的には、どんな時でも確実に使えるケータイのシステムは作れます。要するに基地局と交換機とそれらをつなぐ回線さえ人数分用意できればいい訳です。1セル(エリア)の半径が100~500mのPHSでさえマイクロセルと言われるくらいですから人の集まりそうなところは1セル十数m以下(フェムトセルとか無線LANによるIP電話並み)で構築する必要がありますが、技術的には出来ない事ではありません。問題は通常時の設備稼働率が今の良くて1/10、下手をすると1/100とかになっちゃって料金に響くだけで(そのまま10倍とか100倍にはならないとしてもまあ3倍10倍にはなるでしょう)。現実的には火事や土砂崩れ・津波などで基地局が丸ごと喪失した場合はどうしようもないとして、交換機までの回線(光ファイバー等)が寸断される程度なら基地局同士を無線で接続する機能を追加すれば全く使えなくなるという事態は避ける事が出来ます(基地局に端末を直結するのが簡単かな)。電力は節電モードで3~7日くらい持たせる程度が現実的か。いずれにしても、非常時の通信は安全確保に関わるもの(救出要請など)が最優先、次いで安全確認(行政による安否確認など)、インフラ関係くらいの順で優先され、他地域からの安否確認なんてのは害悪ではあっても何ら益はないし無駄だと思っています(だって、自分が安心したいからするんでしょ?)。私が共感力とやらが低い冷血ヤローなのは自分でも承知しておりますが、通信容量を無駄に食いまくって自分で自分の首を絞めるどころか無理心中を図るような真似して温かい心を持つくらいなら冷血ヤローのままの方がマシです。

 …話がそれている訳ではありません。既にアマチュア無線による非常通信(電波法上の非常通信には該当しないと考えられるがそれっぽい通信)が短波帯(7MHz帯)で行われていて、通算30分くらい聞く機会があったのですが…「そんなヘボオペするならするな」と言いたくなるような有様。チューニングすらうまく取れない奴がいるは、ちゃんと聴かない奴はいるは、常識の足りない奴はいるは、話の長い奴はいるは…。使われているSSBモードの場合チューニングにコツがいるのは確かなんですが、自分が聞きやすいように少し高めの音で聞こえるようにチューニングするとどうなるかというと…相手には極端に低い音で聞こえてしまって非常に聞きづらくなります。暇つぶしのラグチュー(雑談)なら許されても非常時の通信としては論外レベルです。ちゃんと聴くのも初歩の初歩なんですが、コントロールしている局の指示をちゃんと聴いていないのでは意味がない。英語だとhearでもlistenでもなくwatch(アマチュア無線的には”ワッチ”と発音)なのは、耳で”見張る”という意味ですから(日本語だと”聴守”)。常識がないと正しい情報が伝わらなかったり誤った情報を広めたりと副作用が大きいのは説明するまでもないでしょう(インターネットでチェーンメール広げちゃったりするのもこのタイプですな)。話の長いのがなぜ問題かというと、アマチュア無線のような交互通話で一方的に長話すると途中が聞こえなくなった時などに無駄が多いからです(消防など緊急を要する通信のプロはさすがにてきぱきと無駄のない交信をされています…朝昼晩と定期的に交信チェックされるのを横で聞いていただけですが)。7MHz帯なんて良くも悪くも全国に電波が飛ぶ分ヘボオペしていると全国に醜態をさらした上迷惑この上ないので、ちゃんと出来ない(出来る自信のない)人はワッチに徹するべきです。しつこいようですが、自分の”ボランティアやった”感を満足させるための通信は害悪です。

 つまるところ、携帯電話などのややこしい事はシステムが引き受けてくれるシステムは使用者にスキルを求めない分想定外の事態への対応が難しいから単純なシステムのアマチュア無線が役に立つという売り文句は、実はややこしい事を全部オペレーターである人間が引き受けるスキルがあって初めて成り立つ話です(これは同程度の仕組みの業務無線などでも同様)。国際VHF船舶無線などでは呼び出し(非常通信)周波数の聴守義務があるのでSOSを出すにしてもそこでやればいいのですが(ついでに言うと国際遭難周波数なんかは1時間のうち数分は通常の電波発射を行ってはならない時間帯があった)、アマチュアには非常通信用の周波数はありますが聴守義務はないし下手をするとそこで長話する奴もいる…って事で当てにするとろくな事はありません。非常通信に妨害を与えれば勿論違法行為なのですが、ヘボオペで足を引っ張るのは違法じゃないし。電波法上の非常通信は行ったら総務大臣への報告義務がありますしそもそも他の通信手段が使えない場合の最後の手段として規定されていますからやたらと行う機会はそもそもない筈(今回の震災の場合は孤立してしまった場所からの救助要請くらいしか該当しないと考えられる)ですから、私が聞いた7MHz帯の交信は非常通信”のようなもの”なんでしょうが、それにしてもスキルが…。

 そのうち被災地でのボランティア連絡用と称してアマチュア無線機を配ったりするのでしょうが(個人でメーカーに支援要請した人もいると聞きますがこういう時こそJARLが取り仕切らないでどうするんだ)、これもどうなんだか…。例えば避難所内でボランティア同士が連絡を取り合うのに電波を何kmも飛ばせるアマチュア機が必要でしょうか。一切無免許無資格で使える特定小電力機(0.01W)で不足なら1~5W出せる登録制(人間の免許は不要)のデジタル簡易業務機が存在しますからこれで充分過ぎはしないでしょうか。これなら無免許の人間に使わせたりするグレー(いや黒ですが)ゾーンを気にする必要もないですし、外部アンテナの使用も認められていますから必要に応じてそこそこ広範囲の通信も可能です。おまけにデジタル化の恩恵で秘話もかけられるので個人情報を扱うような用途にもある程度対応できます。初動の時期を過ぎたらアマチュア無線である必要は、実は既にないのではないでしょうか。むしろ特定小電力や登録制デジタル簡易業務の無線機にラジオの受信機能を持たせた製品が喜ばれるように思います(ARIBの規定に引っ掛かるのか、ラジオ受信機能のある製品を見たことがないのだが)。登録制デジタル簡易なら某I社のIPコンバーターユニットをかませば合法的に中継器も構成できるぞ。

 ではアマチュア無線が災害時に貢献できそうな事があるとすれば、一つは災害発生時の初動連絡用途です。今回の震災で言えば仙台市の沿岸部あたりならよくある144/430MHz帯の小型ハンディ機でも孤立した場所からの救助要請には十分役立つでしょうが、気仙沼とか陸前高田あたりだと山を越えて電波が飛ばないと意味がないので短波帯が使える必要があります。緊急時に使えるようにしようと思うと電池内蔵・乾電池駆動可能・持ち出し可能な重量とサイズの無線機とアンテナが必須条件になるでしょう。これを地方公共団体の役場や小中学校のクラブ局として配備し、職員の1/3以上に免許取得を義務付けておくとかすれば、日頃からの訓練は必要ですが緊急時には役立つ事でしょう(感度面に多少難があったりする場合もあるがラジオ受信機能が付いている機種も珍しくはないので情報収集にも役立つ)。普段から使えるようにしておけば操作もままならぬまま無免許運用なんて愚を犯さずに済みますし、中継設備(基地局)に頼らずある程度遠距離でも通信を確保できるメリットを享受できます。…書くだけだと簡単だけど実行するのは大変。

 貢献できそうなもう一つは、無線技術のエキスパートとしてのアマチュア無線家自身です。上記に挙げた無免許で使える特定小電力やデジタル簡易業務であっても無線に慣れていない人にとっては操作や効率的な交信方法など分からない事だらけですから、いち早く効率的に使えるようになるよう指導する役割とか設定などの調整、簡単なトラブルシューティング(分解修理はご法度ですが)などは腕の見せ所でしょう…メンコ集めとかだらだらラグチューばかりしている人には縁がないですけど。しかし、実は無線機や周波数で貢献するよりこちらの人的貢献の方が重要かつ効果的なのではないか、と考えます。「非常時の通信だから無免許でも大目に見ようよ」みたいなのは良い影響を与えるところが一つもない訳ですし、ただでさえオペレーターのスキルに依存するシステムですからスキル向上を常に意識しないとデマ拡散システムになり下がるぞ…。

 D-STAR?別項でやるつもりですが、ネットワークが切れると存在価値が激減するのが難ですが国公認システムなのでそれなりのメリットはあると思います。三陸海岸あたりだとレピータのエリア設計もままならないだろうけど…。(とりあえずゲートウェイサーバと称する普通のPCの消費電力ももっと抑えないとバックアップ電源がいくらあっても足らないよ。)

 …「のようなもの」とか「っぽい」とか「非常”時”通信」とか言われたくなければ模範的なオペレーションをすればいい事。出来ないんなら黙ってろ、というか「アマチュア無線の基本はワッチ」を徹底的に再認識すべきです。電波を出すだけ、飛ばすだけが能じゃないんだから。

p.s.1 私だけ上記のように感じたのかと思ったら他にも同じような印象を受けた方を見かけたのでリンクしてみました
p.s.2 自分で書いてて言うのも何ですが、「非常”時”通信」ってフレーズは傑作だな。

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Spirit of HAYABUSA

あきらめずに活路を開こう。

 2011年6月13日、1機のロボットが大気圏で燃え尽きた。そのロボットが送り届けたカプセルには星のかけらが入っていた。

 ロボットが地球を旅立って帰ってくるまで約7年、通信途絶、燃料喪失、電力喪失、エンジントラブルといったどれ一つとっても帰還できなくなる大ピンチを、あらゆる技を駆使して乗り切った。

 正真正銘の未曾有の事態に襲われている今こそ、考え、感じ、あきらめない。今出来ることをやっていこう。

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久しぶりに献血する

前回は2005年(仙台でした)。

 今回は16年前と違いクラッシュ症候群対応で血液が足りないという話は聞かないものの、そのうち血液の必要なシチュエーションも増えるだろうと考えて献血してきました。ここ数年投薬治療とか受けてて条件が悪かったというのもありますが。

 以前大阪に住んでいたときには大阪駅前第一ビル(だったと思う)の献血ルームをちょくちょく利用していましたが、今回はそこまで行くのも大変かなと思い阿倍野の献血ルームへ。私と同じようなことを考えたのであろう人が結構多くて採血までに1時間半ほど待ちましたが、採血自体はスムーズに終わりました。成分献血を選んだので(せっかく献血ルームに行くなら成分献血がお得)採血にもそれなりに時間はかかりましたが、負担も少ないですしね。

 成分だと血液不足という事態になっても2週間後にはまた献血できるので、今後は様子を見つつ対応したいと考えています。無料健康診断までしてくれるし飲み物やお菓子などもいただけるので、献血するなら献血ルームだね。…ボランティアにもなるんだろうけど、あくまでも自分の為。

 ちなみに、都合2時間半程いた献血ルーム内には私より年上そうな献血者は1~2人しか見当たりませんでした(ほとんど20代に見えたが私の隣に初献血らしい10代がいたな)。

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続々アマチュア無線活性化策

…続々と湧いて出ているのではない。

 無線界一般では活性化策≒若年層掘り起こしと認識されている面が多々見受けられますが、なんかこう”違う”策が多いように感じられます。そりゃ、アマチュア無線が安価で自由度の高い通信手段としての地位をほぼ独占出来ていた時代に味をしめた”爺”達が間違いだらけの現状認識を基に考えた対策が功を奏する訳はありません。もちろん”爺”を批判する勢力もありますけど、言う程立脚点に違いがないのか五十歩百歩な印象が拭えません。

 そもそも、今の若年層は生まれた時からネットワーク通信環境と各種電子機器に囲まれて育っていると言っても過言ではありません。インターネット接続環境があれば後はアプリケーション次第で世界中と会話することなど造作もない事です。”爺”達は「アマチュア無線ならタダ」と反論する訳ですが、既に月額数千円の料金でインターネット接続環境が確保されているところにタダ同然のアプリケーションソフト(とマイクとスピーカー)を加えれば出来る事ですから、初期投資として20~30万円+技術の必要なアマチュア無線が経済的に見て見合うというのは無茶苦茶です。Wi-Fi接続環境があればNintendoDSでさえも十分使える筈です(何せマイクもスピーカーも通信機能もそこそこのCPU処理能力も入っているのだから、任天堂が本気になれば3か月もあればサービスイン出来ると予想)。これなら最新のNintendo3DSの購入が必要としても本体2.5万円でいけます。現代のコミュニケーション手段として考えると実はアマチュア無線は自由度が低いというか難易度が高いので、「コミュニケーションをアマチュア無線の主軸にして勧誘するべきではない」と私は主張する事にしています。

 ”違う”と感じるのは、あるいは私に無線の「師匠」がいないせいかも知れません。意外と「師匠」に教わる人はいても自らが「師匠」になっていこうという人は見かけません。いや別に、師匠に助けてもらうのは構いませんけど、いちいち師匠に技術的問題を解決してもらわないと無線が出来ない人が無線やって楽しいか、とは思います。しつこいようですがアマチュア無線の魅力の主軸にコミュニケーションを持って来ようとすると、肝心のコミュニケーションをするところに辿り着くまでに疲れ果てた上お金も使ってしまうというちっとも楽しくない世界が待ってしまいます。”爺”達はここのところを十分理解していないか無視していますから、「師匠」となって責任を取っていただきたい訳ですが…責任を取るだけの技術もなかったりするのよね(で、正しく取り扱えない自分の能力を棚に上げてメーカーに文句をつけたり)。無線界に誘うなら、東急ハンズやホームセンターや100円ショップに行くと何か作りたくなってワクワクするようなタイプの人でないと後で恨まれると思います。LOFTとかはダメね。

 さて、自分で何か工夫するのが好きな理工系物好きの若者をうまくスカウトできたとしましょう。2年くらい前のCQ ham radio誌に「PCやロボットに人材を取られちゃうから良い設備を与えて英才教育を…」とのたまう”爺”がいてびっくり。そりゃF1に乗りたい若者をスカウトしてF1に乗せちゃえば喜ぶでしょうし目論見通りの才能があってどんどん勝てたなら最高に幸せでしょう。でもアマチュア無線にF1のようなステータスは望める訳もなく、簡単に手に入った勝てる環境で長く無線界をリードする存在として育ってくれるかというと疑問です。大抵のスポーツなどは試合に至るまでの過程に天地ほどの差はあっても試合自体はイコールコンディションで行われる(ように努められる)訳ですが、アマチュア無線だとしつこく書いている通り原付とパジェロエボとF1と100tダンプの混走レース。「もっと勝てる設備を」がエスカレートして破たん、あるいはより対等な条件で戦える(無線ではない)ジャンルに逃げられるのが落ちではないでしょうか。”爺”達はアマチュア無線は奥が深いと思っていらっしゃいますが、他のジャンルだって奥は深いんです。ただ、無線は深さのコントロールが容易でないので単純に競い合うのをベースにすると条件の悪い人たちのモチベーション維持が難しいのです。

 …となるとやはりアマチュア無線の原点かつ特権である自作を推す事になるのでしょうが、しかしアマチュアだからこそ電波の質を下げるような事をすべきではありません。”爺”達の中には「古い物でも有効に使うのがアマチュア精神だ(だから電波の質には多少目をつぶれ)」と主張される向きもある訳ですが、そんな事を言っているから馬鹿にされるのです。”アマチュア”は営利を目的としない存在であってプロに対してレベルの低い存在という意味はありません(逆に言えばもらったお金の分だけ働くのが究極のプロ)。なので、まともにやろうとすると送信機の自作は初心者向きではありません。際どいところをモジュール化するという手も考えられますが、ブラックボックスをつなぎ合わせる”自作”で長く興味を引き付けるのは困難でしょう。電波法に縛られない光通信機なら通信の様子が目で見て分かるのは面白いというメリットもありそうですが(実用分野では赤外線を使うので見えないですが)、これも何か違うような気がする…(CQ ham radio誌に頻出した時期もありましたが芳しい反応ではなかったように感じました)。と考えてみたら、電波を見て分かるようにするアイテムの自作なら簡易測定器として後々役立つようにも出来ますし、原理的なところからの理解にも役立つしでなかなか良い案ではないかと自負しています。丸暗記用問題集+国家試験の受験費用(合計数千円)で取れる資格に20,000円以上もかけるような講習会を受けるなら、自動車で言う非公認教習所みたいに工作教室+国家試験対策の勉強会に同程度の費用をかける手もあるのではないでしょうか。(10時間の講義+修了試験で免許を取らせてくれると考えれば高くないとも言えるが、逆に言えば10時間程度の講義で理解できるようになる人なら独学丸暗記で充分であったりもする。24問の国家試験に対したった10問の修了試験の解答を丸暗記させているだけという話も的外れと言えないところが悲しいところである。)

 これまた以前に述べた事ですが、当面一通りの事が出来ると勧められる入門向けの機種がないのですね。よく勧められるであろうFT-817(バーテックススタンダード(ヤエスブランド))は一見安価多機能で良さそうだけど5W出力で短波帯をやっていこうとすると使いこなしが難しい、実はエキスパート向け製品というのが定説(144/430MHzならFM専用でもいいし)。IC-703(アイコム)なら10Wでアンテナチューナー内蔵はいいけど電池が中に入らないという釈然としないところが残る(ついでに既に生産終了)。DX-SR8J/M(アルインコ)は実売6万円台で短波帯というところで注目を集めたが技適なし100W/50W機なので上級資格が必要+申請が面倒というこれまた上級者向け(要するに多機能が面倒になったベテラン用サブ機ユース)。外国では初級資格でも100Wくらい出せる場合が多く、ハンディタイプ以外の10W機はほぼ日本専用で採算性が良くないのでラインナップが貧弱という悪循環に陥っているから特殊な機械ばかり残っているのですが、TV等に妨害を与える危険性・対策の難易度とか電源その他の周辺機器にかかるコスト等を考えると10W機の存在価値はあると考えます。FT-817はその存在価値を低出力に求めていると考えられますが(敢えて低出力での通信に挑戦するというジャンルがあり国際的には5W以下が低出力の目安とされる)、「通信も出来る測定器」なんてのも10W機のあり方として考えられるのではないでしょうか。測定器としての機能や性能を追求すると普通の無線機の何倍も高価になるので(ちょっといい測定器でも高級車並みの値段など珍しくない)、持っているとちょっと便利なんだけど買うには高価で作るのも面倒ってツールを内蔵した無線機はどうでしょう。具体的には標準信号発生器、電界強度計、オシロスコープって感じ…ある程度無線技術に通じた人ならお分かりだと思いますが、既に無線機に付いている回路を少し工夫すれば実現できるであろう機能です。いわゆるゼネラルカバレッジ受信機能の局部発振出力を1mW(0dBm)程度に制御した標準信号発生器があればアンテナ調整に便利ですし(簡単な検出回路を加えてアンテナアナライザーとかディップメーターができ、アッテネーターを加えれば受信感度確認も出来る)、電界強度計なんてSメーターそのもの。バンドスコープ表示機能があればオシロスコープへの転用も十分可能でしょう。もちろん全ての機能に”簡易”を付ける必要はありますが、これらがあるといろいろ便利な筈です。悪用の危険がある標準信号発生機能は、動作中は送信アンプが動作しないようにした上マイク等の入力がつながらないようにしON/OFF操作を本体のボタンでのみ操作できるようにしておけば違法運用に使うには非常に不便で馬鹿馬鹿しくなるでしょう(念のためON/OFFは数秒以内の短時間では反応しないようにすればモールス通信にも使えない)。やろうと思えばそれでも悪用する方法は考えられますが、そこまでするくらいなら普通の無線機を違法改造する方がマシでしょうし。個人的にはHF+50MHzの10WでIC-M504J(アイコムのマリン機)くらいのボディサイズにまとまっていたら欲しいです。価格がIC-7200+αくらいであればそれなりに売りようはあると思います。

 活性化策と言えば若い女性を取り込むのがセオリーとされていますが、理工系女子学生及びその予備軍は勿論の事、それ以外の層にアピールする要素を思いつかない時点で終わっているよなぁ…。同じ収集系趣味でも、女性の集めるものは10年に1回であっても使うかもしれない物という印象が強いですからね(男性は全くのガラクタ収集を趣味にしてしまう事が多々見受けられる←某経済評論家とか)。理工系女子学生及び予備軍には無線技術の実習ってところまでは受け入れてもらえるとは思うのですが、手段であって目的になる方向には動いてもらえそうもない…ような気がします。まあ、若い女性がうっかり入ってくるとちやほやされた後落とされる(一部の男性と仲良くなったりするとその他の男性の一部が嫌がらせをして結果的に追い出してしまうというパターンの話は掃いて捨てて埋め立てるほどある)ので、こんな事を書かねばならないのは非常に残念ですが入ってこない方がいいのかも知れません(男女比が近くなれば飛躍的にマシになるのでしょうが…)。とりあえず無線機のボディカラーをピンクにしてみる、の類は効果ないでしょう。間違いない。

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続アマチュア無線活性化策

…調べてみたら某大佐体制並みだった。

>…ゑ、私は昔からやっている人の既得権が強すぎるのが一番問題だと思っていますので。若い才能がベテランを脅かす機会がほとんどないんだから、そりゃ若い人は入ってきませんって。

 …と、前回書きましたが、昔掘った貝塚(昔取った杵柄…もちろん存じ上げております)でのさばっていると言うべきか。「継続は力なり」はいいけどそういうレベルじゃないと思うんですよねぇ。

 例えばDXCC(DX Century Club:100以上の国や地域(エンティティ)と交信するともらえる賞、というか会員になれる組織)とかJCC(Japan Century Cities:日本の100以上の市と交信するともらえる賞)なんてのを狙っていると昔からやっている人の方が圧倒的に有利。例えばDXCCならチェコスロバキアとチェコとスロバキア、あるいはJCCなら浦和市と大宮市と与野市(五十音順)とさいたま市と交信すると、DXCCで3エンティティ、JCCなら4市とカウントされるようになっています(もちろん浦和市との交信を浦和市とさいたま市両方にカウントすることはできない)。今からやる人はそれぞれ2エンティティ、1市としか交信できませんから数を競うには不利になります。もちろん全市全郡交信の達成は総数が減っている分容易になった筈ですが、JCC-700(700市と交信)なんてのは今からでは当分無理(現存の市が700ないもんね)。DXCCに至っては現存エンティティが330くらいに対し通算が360くらい…っておい。エンティティとなる国や地域には一定以上の距離のある離島なども含まれる(例えば日本だと小笠原とか南鳥島などが別エンティティに出来る仕組み)のですが、昔はこの辺のルールが甘くて乱造されたという経緯もあります。それが常時暴風が吹いているような南緯50度付近の断崖絶壁に囲まれた孤島だったりすると何度も運用が行えませんから、強行上陸して運用するような無茶出来た時代にいた人は良かったねって感じです。「昔は設備も貧弱で大変だったんだぞ」というのも事実ではありますが、1950年代後半だと太陽黒点が記録的な数になった(いわゆるサイクル19のピーク)おかげで弱い電波もじゃんじゃん世界に飛んでいた訳で…。その頃から続けていれば50年以上ですからそれには敬意を表しますが、だからと言って若い世代に偉そうなことを言うべきではないでしょう。いや、敬意を表して多くは望みませんので、「オレはオナーロールだぞ」とか自慢だけはされないように(オナーロール:DXCCで獲得エンティティが現存エンティティ-10以内だとなれる名誉会員)。

 DXCCなどがある程度長期の蓄積型・コレクション系とするなら、コンテストは短期間の集中型のスタイルになります。アマチュア無線におけるコンテストは決まった期間内の交信数を競う競技で、交信数に国内なら都道府県数、国際なら国や地域の数をかけて求めた得点で競うスタイルが普通です。期間は短くて数時間、長くても24~48時間が主流で、1週間とか1ヶ月行うタイプはマラソンコンテストという言い方をする別種の競技として認識した方が良さそうです(開催目的もバンドやモードの活性化策である場合が多いですし)。先程の蓄積型と違って一斉に競技開始・終了する分だけ公平ではありますが、でもスーパーカブとパジェロエボとF1と100tダンプの混走レースなんですよね。順位付けはクラス分けされる場合がほとんどとは言え、若い人が優位になる事はほとんどないと言って良いでしょう(裕福な二世ハムだとまた違ってきますが)。国内コンテストなら法律なども同じ枠組みなのでまだいいですが、国際コンテストともなると冗談抜きで自転車とパジェロエボとF1と100tダンプの混走レース…そりゃ若い人は来ないわ。パラリンピック並みにクラス分けすれば多少はマシかも知れませんが、この競技は書類提出時に「私はルールを守っていることを誓います」と宣誓するだけで自動車レースのように事前事後に車検がある訳でもなければ同じコースを走ってすらいないのでは…(日本はオーバーパワーが常習化している部分が多々あるので偉そうなことは言えない)。無線交信を競技とした時点で設備と地域が大きく影響するのは宿命ですが、せめてスーパーカブとナナハンとで狭い峠道での速度×燃費を競うくらいのルールにしないとダメなんじゃないでしょうか。当然知識や経験を駆使できるベテランの方が優位に立てる筈ですが、力任せだけでは勝てないとなれば多少は違ってきそうな気はします。

 「裕福な二世ハム」と言えばCQ ham radio誌2010年2月号に「中学生がDXCCを達成できた」って記事(カラーページだ!)が載っていました。編集部の意図としてはやればできるという希望を与えたいってところだったのでしょうが、実際に記事を読むと「その条件なら後は本人次第だよね」って感じで、恐らくちょうど30年前の私(中学校入学直前で今でいう4アマ受験直前)が読んだらやる気をなくしていた可能性大です。…現役バリバリでDXCCを追いかけるような両親が建てた別宅シャック(この場合無線用の別荘を指す)+立派なアンテナを使うのなら、無線機は本人の資格(4アマ→3アマにステップアップ)に合わせた出力のものしか使えないというハンデはあるにせよ並みの中学生にはとても望めないような恵まれた環境です。私なんて本などを買ってくれる以上の協力はしてくれないが(学業や生活に支障がない限り)反対もしない親・借家だけどTVアンテナ程度のアンテナを建てる分には容認してくれた大家さんが揃っただけでも十分感謝しなくてはならない状態でしたから、うらやましいを通り越して「その環境で3年できれば100エンティティ目指せるやろ」ですな。常々子供にも無線をやらせようとしているハム親には地雷になるやも知れませんしね(記事を見せられて「このくらいの設備を用意してくれたらやってもいい」とか言われたら大変ですよ!)。太陽黒点が200以上出て10Wも出せば世界中に電波が届くようなサイクル19の再来状態なら設備のハンデはそれなりに小さくはなりますが…先日までの黒点皆無な日々が続くような状況では設備の差が大きく効きます。関係ないけど?「絶望に効くクスリ」というまんがを読んで度々絶望していたのは私です(あれを読んで希望が湧いてくる人が羨ましいのですが?)。

 …などと例を挙げるまでもなく機械を使って自然と人間を相手にするアマチュア無線でお金を含む環境の差とか知識や経験の差が何か競った時に大きな差になるのは当然です。当然ですが、もう少し設備への依存度が下がるような仕組みを組み込まないと新人は参入しないんではないでしょうか。例えば蓄積型なら過去10年分の交信を対象にした「DXCC Decade(仮称)」を設けて現行のDXCCの上に位置づけてみるとか(過去の栄光にすがっているだけでは地位を維持できず、まぐれでは上に上がれず、太陽黒点周期にも近くてコンディション差を緩和できるので10年)、コンテストなら得点を送信出力(出来ればアンテナ利得を考慮して実効輻射電力が良い)で割るとか、工夫の余地はいろいろ考えられます。QRP(小出力)コンテストで似たような事は既にやっていると思いますが、QRPコンテストにしてしまうと大出力の局が参加しなくなって意味がないので、あくまでも条件をバランスさせるためのルールに出来るかが肝になります。例えば「弱い信号の局を拾い集めるほど得点が伸びるシステム」ってのがあればいい訳ですね。了解度(1~5)+信号強度(1~9)+音調(1~9:電信の時だけ)+地域番号(国とか都道府県に割り振られた番号)+送信出力で構成される標準的なコンテストナンバー(コンテスト交信の際に相手と交換する番号)に交信の通算番号を加え、通算番号が小さい(=なかなか交信できていない)相手ほど高得点とすれば…。(もちろんこの場合でも強い電波で総交信数を稼ぐ手もあるが、稼ぐほど相手から見た価値が下がるので力任せだけでは上位入賞は難しくなる…筈である。)ボクシングみたいに階級を増やす手は1位が増えてその分価値が下がる印象があるので、競馬のようにハンデ調整を加える手の方がゲームとしては面白いのではないでしょうか。もちろん、全てのコンテストにハンデ調整が加わる必要はなく、設備強化が上位進出に効くルールのコンテストも当然あって良いと思います。

 こうやってつらつら書いている途中にJARLの会長が理事会で辞任の意向を表明したとか(辞任というよりは退任のような気もしますが)。私が無線を始めた頃には既に会長だったよなぁと調べてみると、その時には既に10年以上会長職だったのね。そんな訳で本当にどこかの大佐と同期かい!って状態でしたが、目一杯少なく見積もって5年は過ぎているだろうけどまあ潮時でしょう。これが20年くらい前なら(本当かどうかは別として)アマチュア無線家を飛躍的に増やしたとして功績をたたえられつつ惜しまれて退任…だった訳ですが、後半の20年で規制緩和は思うように進まず無線家の絶対数減少に歯止めがかからずしかも上級へのステップアップは進まず質も下がる一方で若い人も増えない…ってボロカスに言われても仕方ないかな、という印象です。別に会長だけが悪いとは言いませんが、結果として今のジリ貧方向に導いてしまった責任がないという訳には行きません。どの辺の人たちの支持で地位を築いていたかは私の知るところではありませんが、伝統的コミュニケーション志向層(と、なんとなくきれいな感じにしてみたが「微妙に技術が追いつかないメンコ集め志向層」とも言えそう)辺りかな…。いずれにせよローコストな通信手段としての地位を独占できなくなった時期の対応がお粗末過ぎた点はどう悪く言われても仕方ないのですが、未だにご本人たちには自覚がないように見えるのが難です。(利便性を求めてアマチュア無線を始めた人は、もっと利便性の高い手段が出来ればそちらに移行しますわな、当然。)1990年代前半にネットワークについて見識のある人がそれなりの地位を占めていたらあるいは、とは思うのですが…。

 とりあえず無線をやっていない一般人に対して、(1)立派な設備を自慢したい、(2)貧乏を自慢したい、(3)交信数を自慢したい、(4)アマチュア無線はKing of Hobbyだと呼びかけている、(5)アマチュア無線は世界中と話せると呼びかけている、(6)アマチュア無線は便利と呼びかけている、のどれかに該当する人は2ちゃんねる辺りで「爺」と揶揄されるカテゴリーに入っているので注意が必要でしょう。…複数当てはまる人は重症なので、出来れば10年ほど無線断ちをお勧めします。上級資格自慢とかモールス早打ち自慢なんかも危険ですね。「だったら何を自慢すればいいんだ」と仰るあなた、それこそが諸悪の根源と認識していただければ幸いです…いないと信じたいが。

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4回目の車検を通してみる

当初予定通り。

 うちのPLEOも新車購入から9年経ったので、4回目の車検を通してきました。特に異常もなく無事に終了しましたが、考えてみたら購入地(東京)→1回目(仙台)→2回目(福岡)→3回目(名古屋)→4回目(大阪)と、全部違う場所でやっている…。ちなみに前車は和歌山にいるときに中古で購入、車検は大阪に引っ越してから1回、購入元の奈良の業者に依頼しましたが。

 新車購入の時点で「順調に結婚して子供が出来ていても、10年後ならせいぜい小学校低学年2人以内の筈だからキャパシティは4人乗りで必要十分な筈だ。って事で車体価格は月1万円程度が目安だな。」という計算の元に決めた訳ですが、まあ順調にいく筈もなく…。ランニングコストまで含めたら私の収入ではこのくらいが限度。もちろん車だけが趣味、であればもっとつぎ込めますけど、うち6輪生活だし他にも欲しい物も行きたい場所もいくらでもあるし、将来子供に養ってもらうという選択肢はないので…。

 10年は乗るつもりで買った車とは言え、次回の車検(11年経過)を通すかと言われると難しいところです。一番顕著なのは運転席シートのヘタリ(助手席と比べるとよく分かる)ですが、ボディ全体にも微妙なガタが来つつある雰囲気がありますし、夏タイヤの時だけステアリングホイールの向きに微妙な狂いが感じられる(1回タイヤを換えたのだがその前後で変わらず、スタッドレスを履いている冬場はほとんど感じられないのが謎である…ホイール起因?と思っていたら今回の車検後夏タイヤの時とほぼ同じ状態に?)など、積もり積もっていくと次回はどうなのかなと不安が残ります。走行距離だけ見ればまだまだ何とでもなりそうではありますが、日常的に渋滞の中を走っていれば走行時間の割に距離は伸びないし加減速の加減でも違ってくるのであまり良い指標にはならないですね。もっとも、「買い換えたいと思える車」があれば何とか出来なくはない予算は準備中な訳で、気に入らない新車を買うくらいなら次回も車検を通す方がマシです。致命的なトラブルで乗り換えざるを得ない状況も考慮して数年前からずっと買い換え候補は模索していますが…。

 とりあえず大きな交換部品も発生せず、エンジンオイルとエアフィルター交換だけでエンジンの回り方も軽く感じられるようになったので、買い替えについてはじっくり考えようと思っています。

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アマチュア無線活性化策

有効なのはないような気がするけど。

 前々から何度か取り上げているアマチュア無線の活性化策ですが、まずは資格制度の面から出来る事があるか考察してみました。

 昨年11月から12月にかけて第1級アマチュア無線技士(以下1アマ)や第2級アマチュア無線技士(以下2アマ)の試験から電気通信術(モールス符号による通信試験)を廃止して学科試験で符号の知識だけ確認するという、現在の第3級アマチュア無線技士(以下3アマ)の試験と同じ方法にしようという方針についてのパブリックコメント募集があり、先日その結果が発表されていました。パブリックコメント募集と言っても事実上電気通信術試験を廃止するというのは既定方針で意見を聞く形だけ整えていると言っても過言ではないのですが、まあ賛成反対いろいろと意見が出ていました。…大局的見地から見てどうよ、って意見が多いのが非常に気になりましたが。

 試験の科目が減るという事は基本的には難易度が下がる方向になる訳ですが、誰にとっても簡単になる訳ではありません(学科が苦手な人にはむしろ難化する可能性もあります)。昔は世界中に電波が飛んでいく短波帯にはモールス通信技能が必須とされ、それを必須としない日本の制度が異端だったのですが、今やプロの世界からは実質的に消滅したのでアマチュアにだけ義務付けても仕方ないだろうという事なのかアメリカを始め各国からモールス通信技能が無くなりつつあります(以前のアメリカの制度では全ての資格にモールス通信技能が義務付けられていたのだから大転換である)。モールス通信自体は電波帯域が少なくて済むとか回路が簡単で機器の自作がしやすいとか混信を選り分けるのが比較的容易とかでメリットも多々ある訳ですが、個人的には独学が難しいのがネックなんじゃないかと思うんですね(私は語学も苦手なので余計そう感じるんだと思いますが)。学生時代のクラブででもしごかれてれば少しは身についていたのでしょうが、基本的に「コミュニケーションがしたい」ではなく「機械いじりしたい」で無線を始めた私には「モールスで通信するぞ」ではモチベーションが続かない…ので、少々難しくなってもペーパーテストだけで上級資格を取れるようになるのはありがたいところです。口の悪い一部の人には「伝統芸能」と皮肉られたりもするくらいですが、実際に電波を出して通信するのが上達の近道と考えればモールス通信の普及にはいい事なのではないかとも思います。アマチュアの場合は下手で困るのは基本的に本人だけですし。

 しかし上級資格が自慢の人にとっては受け入れ難い変更なようで…道具の人にとってはどっちでもいいっぽいですが。過去に頑張って上級資格を取得された人の気持ちも分からなくはないのですが、さりとて今現在資格に見合った知識や実力を持っていらっしゃるかというとあまり当てにならないのが実態でしょう。ぶっちゃけた言い方をすれば「今試験を受けに行って合格できますか?」試験問題のレベルは法規も無線工学も下がっているとされるのですが、法律は改正点も多数あるので現行法に追いつけていない方も多々見かけますし、工学も昔は無かったデジタル系の技術に関する問題も必ず出ているのが現状です。記述式の頃には例えば「○×の5つの要素のうち3つを答えよ」で済んでいた問題が今の選択式だと「下に示した5つの要素のうち正しいものに1、間違っているものに2を付けよ」となっていて、必ずしも楽になっているとは言えない部分もあります。記述式の計算問題なら部分点をもらえていたという話も聞きますが、選択式の場合部分点はあり得ないし。とりあえず、135kHz帯の免許に必須の等価等方輻射電力の意味が分からないとか電波防護指針の確認(JARLのサイトに掲載されている算出用チャートに何を代入すれば良いかが分かる程度)が出来ないと胸を張って言っちゃう人に1アマは不要だと思ってます(いるんだこれが)。つーか、今の試験問題のレベルで1kW出せるのって少々問題があるような気がするんですが。

 一方で「電気通信術の試験を全廃するなら4アマにモールス通信を開放しても良いのではないか」と仰る向きもいらっしゃるようですが、個人的にはそこまで棚ボタする必要はないかなと思っています。同様に3アマ以下への10/14MHz帯開放とか2アマへの増力とかも。

 自動車の運転免許と比較すると分かりやすいと思うのですが、私の父親の世代なら運転免許を取るのにポイント調整だの何だののちょっとした整備技能は必須だったようですが、私の頃(AT限定免許が一般の人でも取れるようになった頃)だと運行前点検以上の技術的知識は求められない代わりほぼ全員がMT免許を取るにも拘らずAT車教習が教習所内・路上で各1時間必須とされ、私の妻の頃(AT限定が一般化した頃)に至っては「駐車する時はP、前に進む時はD、バックの時はR(Nの用途すら教わってないらしい)」で運転免許を取れている訳で…。MT運転技能を電気通信術(モールス符号による通信)に置き換えればおおよそ似通った感じになるのではないでしょうか。アマチュア無線においては質の悪い電波を出すのは多々問題があるけれども運用が下手なのは当人が恥をかくだけですから、私は工学のレベルを下げるのには反対ですが、電気通信術試験は必須ではないと考えます。アマチュア無線なんて機械なしでは絶対出来ない趣味な訳で、ミラーバーン化したある道路を最新型スタッドレスタイヤを履いた電子制御満載4WDのAT車だろうと丸坊主タイヤ電子制御一切無しのMT車だろうと速く安全に走れれば良い訳で、ドライバーの自己満足はともかく周囲の人間にはどっちだっていいのです。電気通信術はそもそもある程度の実力がなければ交信自体が出来ませんし、人力だろうと解読機等の機械任せだろうと通信能力には違いないのではないかとも思います(機械で追いつけないレベルなら機械任せの人には交信のチャンスは無い訳だ)。

 …必死になって電気通信術試験を必須にすべきという主張をされている2アマの方には申し訳ないのですが、2005年以前で45文字/分、それ以降で25文字/分の欧文では現実世界においては全く力不足なのはご承知な筈で、ことさら騒ぎ立てると困るのはご自身ではないかという懸念がある事も補足しておきます。まして和文が無くなった後の1アマを取らなかった、または取れなかったのは90%以上電気通信術ではなく学科(法規か工学)に引っ掛かっていたからで、2アマの学科が取れて1アマのが取れなかったというのは自慢にも何にもなりません。(実力として身に着くかはまた別ですが、2アマの人なら試験に通るだけなら3ヶ月くらいで1アマレベルは何とかなると思われます。)で、今の世の中1kW出そうと思うと電波防護基準を満たすのは必須ですから、そこら辺に対応できる筈の1アマレベルの知識がない人が棚ボタ増力を期待するのはねぇ…。同様な事は1982年以前の旧電信級アマにも言える(試験に変調回路の話が一切出てこないなどいろいろ問題がある)のですが、当時の電信しかできない電信級だけ持っていて棚ボタ操作範囲拡大+増力で現在の3アマ相当に至る人はまずいないと見て良いでしょう(1982~1989年の電信級に変調関係の話があったかどうかが不明だが、この頃も10Wだったので増力目当てはあり得ないと見て良いだろう)。

 いずれにせよ早くから上級資格を取った人たちは早くから正規に大出力で運用できるとか上級資格がないと免許されないバンドに出られるなどのアドバンテージはあった訳で、パブリックコメントに寄せられた意見に「1アマ、準1アマ、2アマ、準2アマ…として欲しい」というのを見つけた時には「そこまで見栄を張りたいか」と苦笑してしまいました。いや別に、私は準3アマと名乗ってもいいんですけど(でも出題形式が全く不明だった一番最初の試験の時だったからある意味チャンレンジャーだったとは思います)。確かに上級移行を目指さなくても済まない事はない現行制度には問題がありますが、だからと言って現状と乖離した制度を維持すべきとも規制緩和と称して棚ボタを乱発すべきとも思いません。個人的な意見をまとめると下記のような感じでしょうか。

・無線機器の技術水準が上がったからより簡単な資格でも大出力を扱って良い(先日一切の免許不要で扱える水準が最大1W、従来の10mWだから100倍に改正された)という建前ではあるが、アマチュア無線においては前提となる技術基準適合制度に依らない機器(基準さえ満たせば完全に自作しても構わない)も扱えるので一定の技術水準は担保されるべき。少なくとも無線工学の試験レベルを落とすべきではない。
・現在の従事者免許は終身有効だが、法令はどんどん変わっていて現行法をキャッチアップできているという担保が全くない。(極論すれば50年前に取ったときの知識のままでいても大ベテランだぞと威張ってしまえる…だけなら良いが自覚なしに違法運用してしまえる。)
・モールス通信には、例えば欧文25字/分の試験で得た免許でも和文200字/分の通信をする事に何ら制限はない(中国語やハングルの符号でももちろん構わない)。アマチュアのように実力がなくて困るのが自分だけなら、現時点での3アマのように符号の知識だけでも担保されていれば良いという判断をより上級の資格に拡張しても大きな不都合はなさそうだ。
・アマチュア無線家としてはアメリカのような包括免許制度が望ましいが、現行の資格制度は違法運用に対する取り締まりの甘い状態のまま包括免許化するのには不適当と考える。(アメリカは取り締まりが厳しいとされる。)
・ステップアップを促す意味で上級資格には相応のアドバンテージが求められるが、既に持っている資格に対する棚ボタステップアップを求めるべきではないと考える。

 ではどうすれば良いかと考えているかというと、現行制度を少々いじっても矛盾は解消できないでしょうから根本的に新しい制度、つまり包括免許を前提とした制度に実質移行を図るのが良いと考えています。以前提案した「アマチュア無線技術士」では「技術士」の名称独占に引っ掛かりそうなので、「総合アマチュア無線技士」と改訂してみました。

(1)現行制度の「アマチュア無線技士」の操作範囲・試験内容等は現行のままとする。今後の新規開局は社団局のみ、既設局は再免許のみとする。
(2)従事者免許と包括制局免許の連動制とした「総合アマチュア無線技士」を新設する。再免許の際にはに一定の講習(レポート提出等)を含む更新手続きを必要とする。コールサインは資格別とし、複数資格を取得した場合でも全てのコールサインは同時に有効とするが、操作範囲は使用するコールサインに連動するものとする。上位資格の取得・更新を行った場合は下位資格も連動して更新されるが、更新手続きで不合格となった場合は資格は失効となり再試験で合格する必要がある(自信が無ければ下位資格で更新しても良いが当然合格した資格だけが有効)。
(2a)第一級総合アマチュア無線技士
 操作範囲は第一級アマチュア無線技士相当。アマチュア無線以外の無線通信技術についても相当の知識を有し、下位資格者の指導・監督が出来る。コールサインはサフィックス2文字で有効期間5年。完全な包括免許制で、設備変更等に際しての一切の申請・届出等は不要。
(2b)第二級総合アマチュア無線技士
 操作範囲は第二級アマチュア無線技士相当(送信出力上限100~200W)。アマチュア無線における高度な専門能力を有し、下位資格者の指導が出来る。コールサインはJ*n+サフィックス3文字で有効期間5年。電波の質に影響を及ぼさない範囲に限り届け出れば認められる限定包括免許制。
(2c)第三級総合アマチュア無線技士
 操作範囲は第三級アマチュア無線技士相当(送信出力上限25~50W)。アマチュア無線における応用的な能力を有する。コールサインは8*n+サフィックス3文字で有効期間5年。技術基準適合設備を使う範囲に限り届出制の限定包括免許として扱われるが、それ以外の設備については申請により許可を得る必要がある。
(2d)第四級総合アマチュア無線技士
 操作範囲は21~1200MHzのアマチュア無線バンド(送信出力上限10W)で、モールス符号による通信は除く。技適基準適合設備のみ使用可能。指導資格者の指導を受ける場合に限り第三級相当の運用を行える。アマチュア無線における基礎的な能力を有する。コールサインはサフィックス4文字で有効期間1年。更新(再免許)は行えない。

 4段階の制度なので諸外国との互換性を考えると多過ぎる嫌いはありますが、4級は再免許が利かない制度としたので国内限定で良いでしょう。ARISSスクールコンタクトの事を考えて1級の指導下に於いてのみ50Wを許可してしまうという手もありますし。で、1級は無制限包括の代わりに自分で自局の適合点検が行えるレベル(今の1アマでも登録点検員にはなれるが実務はかなり厳しい)、2~3級も学科は現行資格よりレベルを上げる代わり、全資格とも電気通信術は無しだが1~3級にはモールス符号知識の問題を含めるというのが落としどころかなぁと考えています。

 現実的に上記の私案が採用されるとは思ってないので、限界ギリギリの妥協案として「1アマに50W以上の移動局免許を認める」ってのはどうかとも考えています。一部の2アマが3アマ以下との差別化案として移動局に100W免許をとか言っているのを聞いた事があるのをヒントにしただけですが。…1アマには電波防護指針を守れるかどうか判断できる筈なので、実運用時に守れてなかったら即お縄って条件で(通常なら改善命令などを経る訳ですがここは厳しく!)。

 …ゑ、私は昔からやっている人の既得権が強すぎるのが一番問題だと思っていますので。若い才能がベテランを脅かす機会がほとんどないんだから、そりゃ若い人は入ってきませんって。

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