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125ccATの付帯免許化について考える

…私は反対。

 昨秋に普通(四輪)免許におまけで付いてくる原付免許で125ccまで乗れるようになるという噂が流れました。実態としては「普通免許を持っている人に自動二輪小型(125cc)AT限定免許を取りやすくしたい」とかそんなレベルの話でしたが。

 バッサリ言い切りますが、私は運転免許は「実技試験なくして免許なし」とすべきだと思っていますので、現時点で普通免許に原付と小型特殊が付いてくること自体に否定的な立場を取ります(「をまえは昔取ってるからそういう事言えるんだろ」とおっしゃる人もいるでしょうが、返上上等!なのです)。何せ二輪と四輪と小型特殊それぞれが操作体系や必要な運転技術が違うんだから上位下位の関係にあると考えるのも、原付と小型特殊は筆記試験(それも四輪や自動二輪の半分の問題数)だけで取れるというのも根本的な間違いで、同じ道を走る以上同じ試験体系であるべきだと考えます。「原付と小型特殊は自動車専用道路を走れないのだからその分簡単でも良いのではないか」という意見もあるかも知れませんが、それなら普通自動二輪小型限定も同じこと(現状は小型二輪だからって簡単になっている訳ではない)。さすがに「小型二輪AT限定を取りやすく」と言い出している(と言われている)経産省あたりもタダで付帯させてもいいとは思ってなくて講習を受けさせる形を考えているっぽいですが、「受ければOK」な講習と「受からなければならない」試験では雲泥の差があります(講習だけど合格しなければならない、だともう講習ではないけど)。法的に拘束力を持った「試験」でなければ受けさせる意味がありません。

 そんな訳で私個人的には付帯免許化など議論の対象にする余地すらないと考えるのですが、世間にはまあいろいろ意見がありますので代表的そうなところを論破していこうかな、と。

〇125ccATの運転なんて簡単。
 大嘘。確かに走り出すだけならアクセルひねるだけ。でも二輪は止まる方がはるかに難しい。四輪の場合急制動は教習項目に入っているだけで試験はされませんが、二輪には試験もあり、失敗すると即不合格(速度不足または開始線の手前で制動開始した場合1回だけ再挑戦が許される)。だいたい今の四輪車はABS(アンチロック機構)やらEBD(ブレーキ力自動配分)やらESC(横滑り防止装置)が漏れなく付き、車種によってはブレーキアシスト(急ブレーキしなきゃいけない筈の状態と判断されるとブレーキの踏み方が弱くても自動的に急ブレーキする)や「ぶつからないクルマ?」でおなじみの?自動ブレーキまであるのでとにかく目一杯ブレーキをかけさえすれば大体最善の結果を得られるのに対し、二輪はやっとABSが普及し始めたくらいで、その上前後輪のブレーキが独立していているのが普通でブレーキ力の配分を誤ると止まれないか転倒するという状況に陥る(運転状況により最適な配分が大きく変わるので簡単に連動できない)。前後に子供を乗せたママチャリで濡れたマンホールを踏んで転倒(しかける)なんて話も珍しくないのに二輪の方が運転が簡単とか、どこに脳みそが付いているのかという暴論にしか聞こえない。しかも125ccの二輪は80km/hくらい普通に出せるが、そこからフルブレーキを確実にできますと自信を持って言える人が一体どれだけいる事か(大型二輪所持者も含め口で言える人はいくらでもいるけどね)。そもそも50ccの原付ですら昔80km/hとか90km/hとか改造なしで出る時代があって死屍累々になったものだから60km/h以上出ないように規制されたという経緯があるので、排ガス規制などでおとなしくなったとは言え80km/hくらいは何の問題もなく出せる125ccバイクの免許をそんなに簡単に与えていいのだろうかと考えるのである。

〇海外では125ccが付帯免許で普通。
 事実だが、冷静に考えてみていただきたい。ヨーロッパ辺りでは14歳くらいでモペッド(30ccくらいのエンジンの付いた自転車:まさに昔の日本で想定されていた”原付”)に自動的に(免許無しで)乗れる制度になっていた国もあり四輪の免許を取れる頃には125ccくらいのバイクに乗っていてフツーてな文化で、改めて小型バイクの免許を取らせる必要などないでしょ、って話なだけではないか?東南アジアの方なんかに至っては「免許取得希望者が多すぎて試験場のキャパシティをはるかに超えちゃってるから125cc以下のバイクは免許制度を止めた」なんて国もあるくらいで、やはり四輪の免許を取る人は既に二輪の運転経験があるのが当たり前で付帯しているいない以前の話、ってだけではないの?で、免許の基準が緩い国は事故率が高いけどそれも真似しますか、ってお話。

〇このままではバイク産業が絶滅しかねない。
 バイクの売り上げ台数が全盛期(1980年代)の1/8とか1/10とか言われているのは事実だが、免許制度を緩くして回復するかは疑問。バイク人口減少の原因の一つにはヘルメット着用規制の強化もあるが、さすがにこれを緩めると死屍累々になるのは目に見えるのでできないだろう。バイク販売台数の大半を占めていた原付が減少したのはメーカーの一角であるヤマハが出した”漕がねばならないがヘルメット着用義務も保険加入義務も納税義務もない(しかも道路交通法もクソもなし!)”電動アシスト自転車の普及と、”雨にも濡れなきゃエアコンも効き簡単に転倒したりしないし10万円くらいで売ってる10年落ち中古車でも十分走る”軽四輪車の性能・信頼性向上の方がはるかに影響が大きかったのではないか。二輪に乗れる免許所持者を増やしたところで雨が降れば濡れ暑さ寒さが直撃し雪なんか積もったらお手上げで晴れてても埃塗れになる上駐車環境も悪い(実際に私は自動二輪料金が掲げてあるにも拘らず駐輪を断ってきた駐車場に遭遇したことがある!)バイクに乗ってみようと思う重症のマゾヒストがいっぱいいるだろうと期待する能天気な業界人の頭を何とかするのが先だと思う次第である。
※何せとんちんかんな戦略しか打ち出さなかった結果携帯電話の普及になす術もなくボロボロになったアマチュア無線業界も見ている私なのでこの見立てには絶対的な自信を持ててしまう。
※※まあ普通のまともなアマチュア無線家は携帯電話時代にフツーに適応した訳ですが。

〇バイクはエコノミーでエコロジー。
 嘘(エコノミカルでエコロジカル、って話ではない)。125ccAT車の新車価格は20万円くらいから(乗り出しだともう数万必要)と四輪車より確かに安いが、まともな装備を一から揃えると更に5万円くらいは覚悟する必要がある(実際には少なくとも上着は夏用・冬用と用意しなければならないので更に2万円くらいかかると考える方が良い)。普段着そのままで乗っても問題のない四輪車と一緒にしてはいけない。燃費は四輪車の最良の方くらいは確実に出るが、乗れるのが1人というところを考えるとびっくりするほどではないような気がする。定員2名のバイクならもちろん2人乗れるが、装備も2人分必要。どのくらい安くなるか試算した人によると「10km/l以下の燃費で通勤利用している車の代わりにするなら数年で投資分を埋められるかも」くらいだそうな…。

〇(筆記だけで取れる)原付免許は一種のセーフティーネット。
 補助金出してでもてまともなドライバーまたはライダーとして養成すればいいではないか。任意保険も掛けずに公道に出て誰か轢き殺して一生立ち直れなくするより余程筋がいいんじゃない?

 免許を取りやすくするのを反対することについて「老害だ!」という方もいらっしゃるようですが、私は「実技試験なくして免許なし」「付帯免許は返上上等!」という立場を取りますのでそんなこと言われる筋合いは1mmたりともありません。いや実際、「バイクの免許取ろうかと思うんだけどどうでしょう」とか聞く人には一様に「止めとけ」と答えるようにしているんだけど、乗る人は反対されても免許取るしそういう人でないと乗り続けないので、免許を簡単にすれば市場が広がるなんて温い考えは地下10kmくらいの穴掘って埋めとけと思うのであります。
※「なんか思ってたのと違う」とかの理由で乗らなくなるならいいんだけど、問答無用で乗れなくなる人が出るのはこちらにも悪影響になるので困るんですよ。
※※死んで乗れなくなるとかなんとか書きたくないから察してください(って書いてるじゃん)。

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